ヴェッセリーナ・カサロヴァ

ヴェッセリーナ・カサロヴァ（Vesselina Kasarova, 1965年7月18日 - ）は、ブルガリアを代表するメゾソプラノ歌手の一人です。彼女は、その卓越した歌唱力と表現力で、世界中のオペラファンを魅了してきました。

生い立ちと教育

カサロヴァは、ブルガリアのスタラ・ザゴラで生まれ、幼少期から音楽に親しんで育ちました。当初はピアニストを目指し、演奏家としての研鑽を積んでいましたが、ソフィア音楽アカデミーで声楽を学ぶうちに、その才能が開花しました。レッサ・コレヴァに師事し、在学中にはソフィア国立歌劇場でデビューを飾るという、目覚ましい活躍を見せました。

国際的なキャリア

1989年、カサロヴァはチューリヒ歌劇場と契約し、その才能は瞬く間に聴衆に認められました。同年には、ベルテルスマンが後援するドイツの国際声楽コンクールで優勝し、BMGクラシックス（RCAレッド・シール・レーベル）との契約を獲得。これを機に、彼女の国際的なキャリアは本格的にスタートしました。1991年には、コリン・デイヴィス指揮によるモーツァルトの《皇帝ティートの慈悲》でザルツブルク音楽祭にデビュー。ロッシーニの《セビリアの理髪師》では、ウィーン国立歌劇場への初出演も果たしました。1992年には、ザルツブルク音楽祭でマリリン・ホーンの代役として《タンクレーディ》に出演し、その名声を確立しました。

近年では、グルックの《オルフェオとエウリディーチェ》のオルフェウス役で、ミュンヘン・バイエルン州立歌劇場に出演するなど、意欲的な活動を続けています。また、同じスラヴ系のソプラノ歌手、エディタ・グルベローヴァとの共演も多く、コンサートや録音で素晴らしいハーモニーを聴かせています。

日本との関わり

カサロヴァは、2000年にオペラ歌手として初めて日本を訪れました。その後も2002年と2004年に来日し、2004年には日本各地でオペラ公演に出演。東京ではリサイタルも開催し、日本のファンを魅了しました。

多彩なレパートリーと録音

カサロヴァは、幅広いレパートリーを持っており、フランス歌曲、オペラ、宗教音楽など、様々なジャンルの作品を歌いこなします。これまでに、ショーソンやラヴェルなどのフランス歌曲、チャイコフスキーの《スペードの女王》、オッフェンバックの《美しきエレーヌ》などの録音を発表しています。また、モンテヴェルディの《ウリッセの帰還》、ベルリオーズの《ファウストの劫罰》、マスネの《ウェルテル》、リヒャルト・シュトラウスの《ばらの騎士》などのDVDにも出演しています。

2003年には、作曲家クラシーミル・キュルクチィスキーの協力のもと、《ブルガリアン・ソウル》と題したCDをリリースしました。このアルバムは、ブルガリア民謡を通史的に編集したもので、彼女のルーツへの深い愛情が感じられる作品となっています。

ヴェッセリーナ・カサロヴァは、その才能と努力によって、国際的なオペラ界で確固たる地位を築き上げました。これからも、彼女の歌声は、世界中の人々に感動を与え続けることでしょう。

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