ソドマ

ソドマ：マニエリスム期の異才

ソドマ（Il Sodoma, 1477年 - 1549年2月14日?）は、ジョヴァンニ・アントニオ・バッツィ（Giovanni Antonio Bazzi）という本名を持つ、マニエリスム期のイタリア人画家です。彼は、シエナ派の伝統的な様式に、16世紀ローマの盛期ルネサンス様式を取り入れた独自の画風を確立しました。

生涯

ソドマは、ピエモンテのヴェルチェッリでバチス家の出身として生まれました。彼の最初の師は、ジョヴァンニ・マルティーノ・スパンツォッティであり、また、ジローラモ・ジオヴェノーネの弟子でもあったと考えられています。彼の力強い色彩などの独特なスタイルは、ロンバルディア派の影響を受けているとされますが、ソドマがミラノを訪れた記録はあまり残っていません。1503年頃にはシエナに移住し、スパンノッキ家の代理人の依頼を受けて、ベネディクト会修道士のためのフレスコ画連作や、シジズモンド・キージ侯爵のキージ宮の装飾を手掛けました。

ソドマは、ピントゥリッキオと並んで、シエナで盛期ルネサンス様式を実践した最初期の画家の一人です。彼の初期の重要な作品として、モンテ・オリヴェート・マジョーレのベネディクト会修道院に描かれた17枚のフレスコ画が挙げられます。これは聖ベネディクトゥスの生涯を描いたもので、ルカ・シニョレッリの仕事を1498年に引き継ぎ、1502年に完成しました。その絵には、アナグマの毛皮をまとったソドマ自身の姿も描かれています。

1508年、ソドマは高名なシエナ人商人アゴスティーノ・キージに招かれローマへ移り、バチカン宮殿の「署名の間」の装飾を担当しました。彼は、ピンテゥリッキオが復古させた古典的な様式で、2つの大作と様々な装飾、見せかけの仕切りによって区切られた丸天井にグロテスクな装飾を施しました。しかし、ジョルジョ・ヴァザーリによると、教皇ユリウス2世はソドマの作品を気に入らなかったと伝えられています。ただし、教皇が代わりにラファエロに「正義」「詩学」「神学」の制作を依頼したという説は、記録によって裏付けられていません。

1510年、ソドマはシエナに戻り、キージ宮の外装を、白黒のキアロスクーロを用いて聖書やギリシア・ローマ時代を題材にした装飾を描きました。当時、シエナではこのような装飾は初めての試みでした。この頃のソドマの絵画には、フィレンツェ派、特にフラ・バルトロメオの影響が見られます。その後、キージによって再びローマに呼び戻されたソドマは、ヴィラ・キージ（現ヴィラ・ファルネジーナ）でバルダッサーレ・ペルッツィと共同で仕事を行い、アレクサンドロス大王の生涯を描きました。『ダリウスのテントにいるアレクサンドロス』や『征服者とロクサネの婚礼』は、彼の代表作として知られています。

1513年、レオ10世がローマ教皇に即位すると、ソドマは教皇に『ルクレチアの死』（あるいは『クレオパトラ』）を献上しました。レオ10世は、その作品を高く評価し、ソドマに多額の報酬を与え、彼を騎士に叙任しました。その後、ソドマはシエナに戻り、ピサ、ヴォルテッラ、ルッカなどで仕事を探しました。ルッカからシエナに戻った後、1549年2月14日に亡くなりました。記録には残っていませんが、浪費癖があったとされるソドマは、おそらく財産を使い果たし、シエナの病院で貧困のうちに亡くなったと考えられています。

若い頃、ソドマは結婚していたようですが、すぐに離婚し、娘はソドマの弟子であるバルトロメオ・ネオーニ（別名リッチョ・サネーゼ）と結婚しました。

人物像と評価

ソドマは、ジョルジョ・ヴァザーリの著書『画家・彫刻家・建築家列伝』で、モラルや行状を非難され、作品に対する称賛も控えめに描かれました。ヴァザーリによると、ソドマは“Il Mattaccio”（無鉄砲、凶暴）というニックネームで知られており、その名前を付けたのはモンテ・オリヴェートの修道士たちだということです。また、彼は大道薬売りのような派手な服装を好み、家には様々な動物と一緒に暮らしていたとされています。冗談好きで音楽を愛し、自作の下品な詩を歌っていたとも伝えられています。

ヴァザーリは、ソドマが仕事に投げやりであったと主張しています。シドニー・フリードバーグもこの意見に同意しており、ソドマが初期に成功したのは、シエナでは肖像画ばかり描いており、競争相手も審査員もいなかったためだと指摘しています。ヴァザーリはさらに、年老いたソドマが怠惰になり、フレスコ画の下絵を壁に直接描くようになったと述べていますが、同時に、ソドマの作品には素晴らしいものも多く、生前は高く評価されていたことも認めています。

現在シエナ絵画館にある『聖家族』など、ソドマの作品の中には、以前レオナルド・ダ・ヴィンチの作品と誤認されていたものもあります。画架を使って描いた絵画は比較的少ないですが、ロンドンのナショナル・ギャラリーには2点の作品が所蔵されています。ブレラ美術館にある『聖母』は、親方の影響が色濃く見られると評価されています（ただし、その真贋については疑問視する意見もあります）。また、現代の批評家の中には、ラファエロが『アテナイの学堂』の中にソドマの肖像を描き、同時に、キリスト教会の近くにある絵画はソドマが描いたラファエロの肖像画であるという説を支持する人もいます。

ソドマのフレスコ画の代表作として、1526年に完成したシエナのサン・ドメニコ教会サンタ・カタリーナ礼拝堂が挙げられます。また、サン・ベルナルディーノのオラトリーにある『聖母マリアの生涯』の場面（『訪問』、『聖母被昇天』など）は、ジローラモ・デル・パッキア、ドメニコ・ベッカフーミとの共同制作です（1536年 - 1538年）。シエナのサン・フランチェスコ教会には、『キリストの降架』（1513年）や『鞭打たれるキリスト』が所蔵されており、これらの作品がソドマの最高傑作であると評価する批評家もいます。その他にも、ピサ大聖堂の聖歌隊席にある『アブラハムの犠牲』、フィレンツェのウフィツィ美術館にある『聖セバスティアヌス』などが有名です。

代表作

Cinuzzi Deposition（1513年以前）シエナ絵画館
ルクレチアの死（1513年）ブダペスト美術館
聖ゲオルギウスとドラゴン（1518年）ワシントン、ナショナル・ギャラリー
征服者とロクサネの婚礼　ローマ、ヴィラ・ファルネジーナ
神聖な愛の寓意　シエナ、キージ・サラチーニ・コレクション
カルバリの丘への道（1510年）ブダペスト美術館
鞭打たれるキリスト（1510年）ブダペスト美術館
サビニの女たちの略奪（1525年）ローマ、国立古典絵画館
運命の3人の女神（1525年）ローマ、国立古典絵画館
聖セバスティアヌスの殉教（1525年）油彩、キャンバス、206 x 154 cm/フィレンツェ、パラティーナ美術館
聖アルフォンソの聖職授任（1530年）シエナ、サント・スピリト教会
東方三博士の崇拝（1530年頃）シエナ、サンタゴスティーノ教会
聖カタリーナの神秘的結婚（1539年 - 1540年）ローマ、ボルゲーゼ美術館
ピエタ（1540年）ローマ、ボルゲーゼ美術館
聖会話（1542年）ピサ、サン・マテオ国立博物館
聖母と天使と一緒の聖セバスティアヌス（1542年）ピサ、サン・マテオ国立博物館


ソドマの作品は、その独特な画風と、型破りな人物像によって、今日でも多くの人々を魅了し続けています。

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