一代要記

一代要記（いちだいようき）

一代要記は、著者が不詳のまま、鎌倉時代末から南北朝時代初期にかけて成立した年代記です。この作品は後宇多天皇の時代に書かれ、天皇家の歴史を網羅的に記述しています。流布された『一代要記』には、春夏秋冬の四冊が存在し、原本の内容を簡潔にまとめる形で成り立っています。

構成と内容

流布本は10巻に編纂されていますが、各冊の内容は以下のように分かれています。春冊は神代から醍醐天皇まで、夏冊は朱雀天皇から高倉天皇、秋冊は安徳天皇から後嵯峨天皇、冬冊は後深草天皇から花園天皇までの内容が収められています。ただし、流布本は欠けた部分があり、全体の内容が完全に把握できるわけではありません。

この年代記は、その名の通り、各天皇の諡号や追号を示しながら、彼らの簡単な略歴や在位中の出来事を年表式に記録しています。さらに上皇、皇太子、皇女、後宮、摂関、大臣、大納言、参議、蔵人頭、皇子女など、多岐にわたる人名が列挙され、その人々の役割も解説されているのが特徴です。

系譜の重要性

一代要記は、各天皇と皇子女を系線で結びつけ、一大皇室系図としての役割も果たしています。この系図を通じて、読者は天皇家の歴史的なつながりを視覚的に理解することが可能です。また、流布本の中には、系線が略されることもありますが、祖本となる金沢文庫本ではその詳細が確認できます。

文献史料としての価値

一代要記の流布本は、特に水戸徳川家による『大日本史』の史料探索の際に、延宝年間に金沢文庫本が発見されたことで一般に広まりました。その後、金沢文庫本は東山文庫に現存し、部分的には高松宮によって所有されています。

さらに、松平頼恕が国学者の友安三冬に命じて、続編として『歴朝要紀』を編纂させ、朝廷に献上するなど、一代要記はその後の日本史研究にも重要な影響を与えています。

参考文献

この作品を研究するにあたっては、以下の資料が重要です：

• -京都大学附属図書館が所蔵する平松文庫の『一代要記』
• -近藤瓶城が編纂した『改定史籍集覧』（臨川書店、1983年）
• -石田実洋らが校注した『続神道大系』朝儀祭祀編（神道大系編纂会、2005年）

一代要記は、日本の天皇家に関する貴重な年代記として、歴史学の分野でなくてはならない存在といえるでしょう。

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