松平頼恕

松平頼恕：高松藩の改革と水戸徳川家の血統

松平頼恕（まつだいら よりひろ）は、江戸時代後期に讃岐高松藩の第9代藩主を務めた人物です。文化12年（1815年）に高松藩主・松平頼儀の婿養子となり、頼恕に改名しました。彼は、藩の財政再建や文化の振興に大きく貢献し、高松藩の歴史において重要な役割を果たしました。

生涯と業績

頼恕は、常陸国水戸藩第7代藩主・徳川治紀の次男として生まれました。初名は紀経と名乗っていましたが、文政4年（1821年）に養父である松平頼儀の隠居に伴い家督を相続し、高松藩主となりました。彼は家老・木村通明を通じて藩財政の節制や改革を推進し、財政の立て直しを図りました。

特に注目されるのは、久米通賢を登用して行った塩田開発です。坂出の東大浜・西大浜で国内最大級の塩田を開発し、藩の財政を潤しました。また、砂糖作りの奨励や砂糖為替法の制定など、特産品の生産と流通を円滑にするための政策も実施しました。

学問にも造詣が深く、水戸学の影響を受けて『歴朝要紀』を編纂させ、朝廷に献上しました。これは、『一代要記』の後を継ぐものとして位置づけられています。

天保13年（1842年）に45歳で亡くなり、跡を養嗣子の頼胤が継ぎました。彼の墓は、水戸藩から養子入りした2代頼常にならって、霊芝寺に儒式墓で葬られています。

系譜

頼恕の系譜は以下の通りです。

父：徳川治紀
母：八重崎
養父：松平頼儀
正室：倫姫（松平頼儀の娘）
長男：松平頼煕（松平頼胤の養子）
次男：松平武揚（松平斉厚の養子）
三男：松平勝成（久松勝成、松平勝善の養子）
四男：松平頼聰
* 五男：大久保忠礼（大久保忠愨の養子）

彼は多くの子女をもうけ、その中には他家へ養子に出た者もいます。また、養子として迎えた頼胤が後を継ぎました。

高松松平家における役割

頼恕の養子入りは、高松松平家の血統において重要な意味を持ちます。高祖父である徳川宗堯は高松藩第3代藩主・松平頼豊の長男であり、高松藩初代・松平頼重の血を引いています。しかし、5代頼恭以降は頼重の男系子孫ではない藩主が続いていました。

頼恕の養子入りによって、水戸徳川家本家と高松松平家の関係が再び近づき、高松松平家が頼重の血筋に戻ることになりました。頼恕の跡は頼儀の実子の頼胤が継ぎましたが、その後は頼恕の実子である頼聰が継ぎ、その子孫が現在まで高松家当主として続いています。これにより、高松松平家は家祖・頼重の男系を維持することになったのです。

松平頼恕は、高松藩の財政再建に貢献しただけでなく、高松松平家の血統を正統なものとする役割も果たしました。彼の功績は、高松藩の歴史において特筆されるべきものです。

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