一式貨物輸送機

一式貨物輸送機とその前身ロ式輸送機

一式貨物輸送機（いっしきかもつゆそうき）は、日本陸軍が開発した輸送用航空機であり、キ番号（試作名称）はキ56です。この機体は、川崎航空機によって設計され、主に物資や兵員の運搬に利用されました。ここでは、一式貨物輸送機なしでは語れない前身であるロ式輸送機についても詳述します。

ロ式輸送機の登場

1938年、日本陸軍はアメリカのロッキード社が製造した高速旅客機「L-14 スーパーエレクトラ」に目をつけ、30機を購入しました。このL-14は、当時の日本の輸送機としてのポテンシャルを感じさせるものでした。その後、陸軍は立川飛行機に対し、国産エンジン（ハ26）に換装するための製造権を与え、ロ式輸送機としての国産化を推進しました。

L-14は、当時の国産機である中島AT-2（九七式輸送機）よりも速度と積載能力において優れていましたが、静止飛行中に特有の失速傾向や安定性の欠如が課題とされました。このため、ロ式輸送機には翼端固定スラットが装備され、安定性の向上が図られたのです。また、国産化のプロセスにおいては客室も再設計されました。

最初の生産は立川で行われましたが、後に川崎へと移転され、総生産数は100機に達しました。1940年には、戦死した陸軍砲兵少佐の遺体を輸送する任務も果たしています。さらに、航空研究所による改良版であるロ式B型も製造され、与圧キャビンの試験などに用いられました。

一式貨物輸送機の開発

1939年、陸軍はロ式輸送機の安定性を改善し、さらに貨物の搭載量を増加させるための改良機、すなわちキ56の開発を川崎に依頼しました。設計は土井武夫技師の指揮の下で進められ、1940年11月には試作機が完成しました。

この新型機は、ロ式輸送機の設計を基にいくつかの重要な改修点を施しました。具体的には、胴体を延長し、フラップを改良し、エンジンをハ26-IIからハ25に換装しました。これによって安定性が向上し、搭載量も増え、実用性が高まったのです。1941年12月には、一式貨物輸送機として正式に制式採用されました。

この機体の特徴は、胴体左側に大型の貨物専用扉が設けられている点で、空冷エンジンを最大で3基積むことが可能です。また、この機体は貨物輸送だけでなく、兵員の輸送も行うことができ、最大で14名の兵士や10名の落下傘部隊を輸送することができました。

使用と実績

一式貨物輸送機は、当初の設計からの改良が行われつつも、上昇力や速度性能においてはやや劣る部分がありましたが、安定性と離着陸性能が向上したことでより多目的な輸送機として実用性を発揮しました。

1943年9月までに121機が製造され、太平洋戦争中のパレンバン空挺作戦でも活用されました。さらに戦後も各地で物資や人員の輸送任務を続け、陸軍の輸送網の一端を担いました。

このように、一式貨物輸送機は日本の航空機史において重要な役割を果たし、多様な用途に応じた設計と実績を持つ機体となりました。

まとめ

一式貨物輸送機の設計と運用は、当時の日本陸軍にとって極めて重要な役割を果たしました。その前身であるロ式輸送機から派生した技術と設計の進化は、陸軍の輸送能力を大きく向上させました。

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