一畑電気鉄道70系電車

一畑電気鉄道70系電車は、かつて一畑電気鉄道（現・一畑電車）に在籍した電車です。1964年に西武鉄道から譲渡されたクモハ301形電車を改造したもので、70系以外にも西武鉄道から譲渡された60系電車（初代）、およびデハ10形電車（初代）・クハ100形電車（3代）についても記述します。

概要

一畑電気鉄道では、老朽化した従来車両の置き換えと輸送力増強のため、1957年から1964年にかけて西武鉄道から中古車両を導入しました。1957年から1959年には、老朽化した木造制御車の代替として、西武クハ1231形を譲り受け、デハ10形（初代）11およびクハ100形（3代）101 - 104として導入しました。このクハ1231形は、武蔵野鉄道が1940年に製造した3扉ロングシートの制御車でした。

1960年から1961年には、モハ221形・クハ1221形電車を譲り受け、60系（初代）デハ60形61 - 63およびクハ160形161 - 163として導入。1964年には、クモハ301形301 - 304を譲り受け、70系デハ70形71・72およびクハ170形171・172として導入しました。西武モハ221形・クハ1221形は1941年に、西武クモハ301形は1942年に製造された、それぞれの事業者における最後の新製車両でした。

60系と70系は、急行列車用車両の改善と電鉄出雲市駅のリニューアルに伴う特急列車導入を目的に導入されました。譲渡にあたり、西武所沢車両工場で3扉ロングシートから2扉セミクロスシートに改造されました。両系列とも電動車と制御車の2両固定編成を組みましたが、70系は導入時に半数を電装解除し、制御車化しました。

デハ10形（初代）11は1961年に廃車となりましたが、その他の車両は、クハ100形が従来車の制御車として、60系と70系が主に特急・急行用車両として、北松江線の主力として活躍しました。その後、後継車両の導入に伴い、60系は1985年に、70系は1995年に、クハ100形は1996年にそれぞれ形式消滅しました。

車体

外観

デハ10形とクハ100形は、全長17,000mmの半鋼製車体を有します。両形式とも西武時代と同様の3扉構造ですが、譲渡時に両運転台構造に改造されました。側面窓配置はdD6D6Ddです。デハ11とクハ100形101 - 104は製造メーカーが異なるため、寸法や乗務員扉の形状に違いがあります。

60系は全長17,000mm、70系は18,000mmの半鋼製車体です。60系と70系は片運転台構造で、電鉄出雲市側に運転台、反対側に貫通扉があります。西武時代は3扉構造でしたが、譲渡時に2扉クロスシートに改造されました。特に70系は大規模な改造が行われ、側面窓配置はd1D10D2で統一されました。窓以外にも、60系はノーシル構造、70系は窓の上下に補強帯があるなど、外観上の差異が多数ありました。また、窓サッシのアルミ枠化や70系では雨樋の金属化などの改造も行われました。

車体塗装は、デハ10形とクハ100形はクリームと赤系の2色塗装でしたが、60系はオレンジ地に白帯、70系は黄色地に青帯の新塗装が採用されました。後に60系も70系と同じ塗装に変更され、これは一畑電気鉄道の標準塗装となりました。

内装

デハ10形とクハ100形はロングシート仕様で、1958年に導入されたクハ100形102から蛍光灯照明が採用されました。また、全車手動扉仕様です。

60系はボックスシート10脚、70系は12脚を設置したセミクロスシート仕様です。座席定員はデハ60形・クハ160形が56人、デハ70形・クハ170形が64人です。両系列とも蛍光灯照明と自動扉を備えています。特急列車運用時には、座席指定車両に番号札が設置されました。

主要機器

制御装置

制御方式は、全形式ともウェスティングハウス・エレクトリック社開発のHL制御です。70系も主制御器を換装してHL制御化されました。デハ60形とデハ70形は弱め界磁制御機能を有します。

主電動機

デハ60形はMT4（85kW）、デハ70形も導入時にMT4に換装されました。MT4は鉄道省の制式電動機で、GE-244AまたはSE-102が採用されました。駆動方式は吊り掛け式、歯車比は3.42です。

台車

台車は、デハ70形とクハ170形が木南車輌製造製の形鋼組立型釣り合い梁式台車、デハ60形がTR14A、クハ160形とクハ100形がTR10を装着します。いずれも平軸受仕様です。

制動装置

デハ10形とクハ100形はSME非常弁付直通ブレーキ、60系と70系はAMM/ACM元空気溜管式自動空気ブレーキを採用しました。制動方式が異なるため、併結運転はできませんでした。

補助機器

補助機器は、デハ10形、60形、70形は自車搭載、クハ100形は蛍光灯照明用として電動発電機を搭載しました。連結器は、60系と70系は密着連結器、その他は並形自動連結器です。

導入後の変遷

デハ10形とクハ100形は普通列車、60系と70系は特急・急行列車を中心に運用されました。デハ11は1961年に除籍されましたが、その他は長年主力として活躍しました。クハ100形は1962年に片運転台化され、1963年には乗務員扉を撤去しました。また、塗装も手動扉車両の標準色に変更されました。

1971年には、60系、70系、クハ100形の台車軸受部がコロ軸受化されました。1981年からは、80系電車の導入により、クハ104、60系の一部が廃車となり、1985年には60系が全廃されました。70系とクハ100形は、その後も80系や90系と共に運用されました。しかし、1990年代に入り老朽化が進行したため、2100系電車の導入により置き換えられ、クハ100形は1994年から、70系は1995年、クハ100形は1996年にそれぞれ全廃となりました。

車歴

（省略）

脚注

注釈

（省略）

出典

（省略）

参考文献

（省略）

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