七倉温泉

長野県大町市の山間部にひっそりと佇む七倉温泉は、北アルプスへの玄関口として知られる静かな温泉地です。県道の終点という立地にあり、秘湯のような雰囲気を漂わせています。この地に存在する宿泊施設は「七倉山荘」という一軒のみで、訪れる人々を温かく迎え入れています。

泉質

七倉温泉の泉質は、体に優しい単純泉です。源泉温度は62.7℃と比較的高温で、無色透明、そして無臭という清らかな特徴を持っています。pH値は6.74とほぼ中性で、刺激が少なく、肌触りの良いお湯として知られています。登山で疲れた体を癒やすのに最適な泉質と言えるでしょう。

登山口としての役割

この温泉地が特に重要な役割を果たしているのは、登山者にとっての主要な拠点であるという点です。七倉温泉は、以下の方面への登山口として機能しています。

• - 七倉岳・船窪岳方面
• - 裏銀座縦走路の起点となる高瀬ダム方面

七倉山荘のすぐ脇には登山指導所が設置されており、ここで登山者は安全な登山のために登山計画書の提出が推奨されています。無人の時間帯でも、専用のポストに計画書を投函できるようになっています。

主要登山ルート

七倉岳・船窪岳へ

七倉岳や船窪岳を目指す場合、七倉温泉からのルートは険しさを伴います。七倉山荘の西側にある七倉沢の脇から七倉尾根に取り付くのが一般的な道のりです。このルートの序盤には「鼻突八丁」と呼ばれる難所があり、梯子が連続する急な登りが待ち受けています。この急登を越え、およそ5～6時間の道のりを進むと、山腹に立つ船窪小屋にたどり着きます。七倉岳の山頂は船窪小屋からほど近い場所にありますが、船窪岳の山頂へはさらに約2時間を要するため、十分な計画と体力が必要です。

高瀬ダムへ

一方、裏銀座縦走路への起点となる高瀬ダムへ向かう場合は、七倉温泉からさらに奥へと進むことになります。長野県道326号線は七倉温泉が終点となっており、その先の高瀬ダムに至る道路は東京電力が管理しており、許可された車両以外の通行は自転車も含めて制限されています。このため、自家用車で七倉温泉まで来た登山者は、七倉山荘前に設けられた約50台収容可能な無料駐車場に車を止めます。高瀬ダムへは、ここからタクシーを利用するか、あるいは徒歩で向かうことになります。

• - タクシー: 特定タクシー（アルプス第一交通、大町名鉄タクシー）が運行を委託されており、片道約2100円（4人まで乗り合わせ可）。所要時間約15分。
• - 徒歩: 所要時間約2時間。美しい渓谷沿いの道を歩く。

多くの登山者は時間の節約や体力温存のためにタクシーを選択します。

アクセス

七倉温泉へのアクセスは、主に自家用車が便利です。

• - 鉄道: JR大糸線信濃大町駅下車。そこから自家用車で約20分。
• - 自家用車: 長野自動車道安曇野インターチェンジから約45分。長野県道326号線の終点を目指します。

このアクセス方法が示すように、七倉温泉は公共交通機関だけではやや訪れにくい場所にあり、そのことがまた秘境感を高めています。

まとめ

このように、七倉温泉は穏やかな単純泉で登山者の疲れを癒やす湯治場であると同時に、北アルプスの主要な登山口としての機能を併せ持っています。特に、七倉岳・船窪岳方面への険しいルートや、高瀬ダムへのアクセス拠点としての役割は、多くの登山者にとって重要な情報となります。静かな山荘での滞在は、厳しい山行の前後にとって、心身をリフレッシュする貴重な機会を提供してくれるでしょう。

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