七尾港

七尾港：歴史と現在を繋ぐ、能登の要衝

七尾湾に位置する七尾港は、石川県七尾市の重要な港湾です。古くは「香島津」と呼ばれ、天然の良港として栄え、北前船の寄港地として賑わいをみせました。718年の能登国成立時には、七尾湾が国津として定められ、その歴史は古くから深く能登の地域社会と関わっています。

江戸時代には、北前船の中継地として重要な役割を果たしました。1858年、安政4年の五ヶ国条約締結の際、開港地候補として幕府から加賀藩への領地交換が提案されましたが、加賀藩はこれを拒否しました。その後、1862年（文久2年）には加賀藩によって七尾軍艦所が設置され、軍港としての機能も持つようになりました。七尾軍艦所には造船所や製鉄所の他、洋式軍事学問所「壮猶館」の分校である七尾語学所が設置され、多くの優秀な人材を育成しました。石黒五十二、瓜生外吉、桜井錠二、高山甚太郎、平井晴二郎といった著名な人物もここで学んでいます。

明治時代に入ると、1899年（明治32年）に勅令により開港場として正式に指定されました。北陸地方では伏木港（現・伏木富山港）や敦賀港と共に開港場となり、輸出入総額が一定額に達しなければ閉港されるという条件付きではありましたが、七尾港の国際的な役割はますます高まりました。

その後、七尾港は幾多の変遷を経て発展を遂げ、1951年には重要港湾に指定されました。1991年には「能登食祭市場」が開業し、港周辺は「みなとオアシス七尾」として登録され、観光と商業の拠点としての機能も強化されました。

2023年10月には、ロシア・ウラジオストク港との間で旅客船「プレイオナ」が就航しました。ロシアのウクライナ侵攻以降、日本へのロシア船就航は初めてのことでした。七尾とウラジオストクの間には古くから貨物航路が存在しており、近年においても貨物船の往来は継続されています。この旅客船航路の開設は、長年にわたる両港の交流関係の深さを示すと同時に、今後の更なる発展に期待が寄せられています。

一方で、この出来事に対しては懸念の声も上がっています。政治学者の中村逸郎氏は、ロシア側の管理体制の緩さを狙って七尾港が選ばれた可能性を指摘し、スパイ行為への警戒を呼び掛けています。

七尾港は、現在も石川県最大の取扱貨物量を誇る港湾として機能しています。コンテナ航路はまだありませんが、在来型貨物船を中心に、盛んな港湾活動を続けています。また、七尾マリンパークや七尾港湾事務所など、港湾関連施設も整備されています。

七尾港の歴史は、能登半島の発展と深く結びついています。古くからの天然の良港としての恵みと、近代化への対応、そして国際的な交流への展開、様々な歴史的変遷を経験してきた七尾港は、これからも能登地域の重要な拠点として、その役割を担い続けることでしょう。

主要施設

府中地区: 七尾マリンパーク、能登食祭市場（道の駅登録）
矢田新地区: 石川県七尾港湾事務所、七尾港湾合同庁舎、国土交通省北陸地方整備局金沢港湾・空港整備事務所七尾港出張所、第九管区海上保安本部七尾海上保安部、大阪税関金沢税関支署七尾出張所
大田地区: 七尾市公設地方卸売市場
赤崎地区: 北陸電力七尾大田火力発電所
三室地区: 七尾国家石油ガス備蓄基地

港湾統計（2015年度）

発着隻数: 1,626隻（4,029,667総トン）
外航商船: 183隻（3,358,780総トン）
利用客数: 13,705人（乗込人員6,901人、上陸人員6,804人）

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