三八式十五糎榴弾砲

三八式十五糎榴弾砲の概要

三八式十五糎榴弾砲（さんはちしきじゅうごせんちりゅうだんほう）は、大日本帝国陸軍が1911年に正式に採用した榴弾砲です。この砲は、1904年の日露戦争の開戦に伴い、陸軍がドイツのクルップ社に発注した近代的な火砲の一部として位置づけられています。これにより、当時の克式十五糎榴弾砲を補完・更新する意図がありました。

当初、日本陸軍の要求に応じて改訂されたクルップ社の設計が元になっており、そのモデルは迅速に製造が進められましたが、実際に日本に到着したのは1905年の奉天会戦の後でした。そのため、この榴弾砲は日露戦争では使用されませんでした。1911年には正式に「三八式十五珊榴弾砲」として制式化され、昭和時代に入ると「三八式十五糎榴弾砲」と改名されています。

構造と特性

この榴弾砲の閉鎖機は段隔螺式で、可変式の装薬と分離薬筒を採用しています。一号方形薬を使用しますが、旧式の照準器のために弾種ごとに専用の薬嚢を必要とし、同一の数値表で異なる弾量を発射するのが難しいという特異な方式を採用していました。

また、移動方法に関しては8馬輓曳を基本に設計されていますが、国産の馬が体格的に不十分であったため、実際の輓曳はほぼ不可能でした。そのため、陣地を変える際には分解して荷車に積む必要があり、設計段階では分解搬送が考慮されていなかったため、これにはかなりの時間を要しました。結果として、組み立ても移動先で再設置も時間がかかり、実質的には攻城砲に匹敵する機動力しか持たないという大きな欠点がありました。

運用と歴史

この榴弾砲は陸軍の野戦重砲兵の主力となり、大阪砲兵工廠で国産化も進められましたが、前述の問題から生産は長続きしませんでした。1918年には野戦重砲兵連隊が独立した時期から代替として四年式十五糎榴弾砲が使用され始め、1935年頃には予備保管兵器となりましたが、日中戦争勃発後に再び動員されました。

第二次世界大戦中も一部使用され続けましたが、特に1944年には重砲不足の中で改良が試みられましたが、分解式への改造は成功せず、結局自走化が進められました。

三八式十五糎榴弾砲の初めての実戦は1914年の青島攻略戦に遡りますが、その後本格的に使用されたのは日中戦争においてです。この時、野戦重砲兵第十一連隊および第十二連隊に配備され、やがてフィリピンで米軍と戦うことになりました。

自走化と近代化

四式十五糎自走砲の主砲として軽量な三八式が搭載され、直射での機動射撃では短い射程があまり課題にならず、大きな炸薬量によって米軍戦車に対して優れた対戦車戦力を発揮しました。

このような経緯を経て、三八式十五糎榴弾砲は日本陸軍における重要な兵器としての地位を獲得し、戦争の進展の中でその役割を広げていきました。

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