三升家小勝 (6代目)

六代目 三升家 小勝

六代目 三升家 小勝（みますや こかつ）は、明治41年（1908年）8月3日に東京で生まれた落語家です。本名を吉田 邦重といい、落語協会に所属していました。出囃子に『井出の山吹』を用い、二代目桂右女助時代の名残から「右女助の小勝」、あるいは自宅のあった場所から「糀谷の師匠」とも呼ばれ親しまれました。

来歴と人物像

現代の東京電機大学にあたる電機学校を卒業後、東京市水道局（現 東京都水道局）に勤務。金町浄水場で技師として働いていました。当時の落語界では珍しい、大学卒のインテリ出身者であり、将来の協会幹部候補として期待されていた人物でした。妻は日本舞踊家の花柳一衛です。

昭和5年（1930年）3月、叔父の知人である「中村」氏の紹介を受け、曲芸師の春本助次郎を介して八代目桂文楽に入門します。師匠文楽の一字「文」と中村氏の「中」を取り、「桂文中」として常磐亭で初高座を踏みました。

翌昭和6年（1931年）3月には二ツ目に昇進し、「桂文七」と改名。昭和11年（1936年）5月にはキングレコードと専属契約を結び、最初のレコードを吹き込みます。この時収められた自作の新作落語『水道のホース屋』（後に『水道のゴム屋』と改題）は、自身の水道局勤務経験を活かした噺として大きなヒットとなりました。

昭和12年（1937年）5月、「二代目桂右女助」を襲名し真打に昇進。二代目右女助としての芸風は、明るく都会的でスマート。高座だけでなくレコードでも多くの人気を集めました。

戦中・戦後の活動

太平洋戦争中は二度にわたり応召。その間、寄席への出演やレコード制作は中断を余儀なくされました。戦後復帰後は、得意の新作落語に加え、古典落語にも精力的に取り組みました。三代目三遊亭金馬、二代目三遊亭円歌といった同時代の名手たちと並び称され、「両刀使い」としてその力量を評価されました。

六代目三升家小勝襲名と晩年

昭和31年（1956年）3月、「六代目三升家小勝」を襲名します。襲名披露興行の最中であった同年4月、右手に痺れを感じ、軽い脳溢血を発症。東宝演芸場での披露興行は半ばで出演を断念せざるを得なくなります。落語家にとって致命的ともいえる言語障害に苦しむこととなりました。

懸命なリハビリに取り組み、同年6月には高座への復帰を果たしますが、二代目右女助時代のような気力や体力を完全に回復させることは叶いませんでした。

昭和41年（1966年）には再び倒れ、長期の療養生活に入ります。そして、尊敬する師匠八代目桂文楽が亡くなったわずか17日後、昭和46年（1971年）12月29日に死去。63歳でした。墓所は谷中佛心寺にあり、戒名は「慈観院楽説日勝居士」です。

生前は、坊野寿山を師匠とする落語家の川柳会「鹿連会」にも参加するなど、多才な一面も持っていました。

芸歴と演目

昭和6年（1931年）3月 - 八代目桂文楽に入門、「桂文中」となる。
昭和7年（1932年）3月 - 二ツ目昇進、「桂文七」に改名。
昭和12年（1937年）5月 - 真打昇進、「二代目桂右女助」を襲名。
昭和31年（1956年）3月 - 「六代目三升家小勝」を襲名。
昭和46年（1971年）12月 - 死去。

主な演目

新作落語
水道のゴム屋
かばん
妻の釣り
操縦日記
女中志願
金言みくじ
俳句会
二人酒
犬ひろい
古典落語
熊の皮
初天神
壺算
花見小僧
真田小僧
二番煎じ
明烏
佐々木政談
お茶汲み
権兵衛狸
寄合酒
味噌豆

弟子

三升家勝太郎、桂右喜松などが門下に入りました。また、三代目三遊亭圓歌一門へ移籍した三升家勝彌、初代林家三平一門へ移った三升家勝二、勝丸、七代目立川談志一門へ移籍した三升家勝松などがいます。

音源

六代目三升家小勝の高座は、複数のレコードやCDとして残されています。

落語特選12 六代目 三升家 小勝（VDR-21012） - 『ゴム屋』『壺算』『熊の皮』『初天神』など収録
NHK落語名人選97 六代目 三升家 小勝 （POCN-1141） - 『二人酒』『命』収録
ビクター落語 六代目 三升家小勝（VZCG692～VZCG695） - 『水道のゴム屋』『三国志』『真田小僧』『佐々木政談』『操縦日記』など多数の演目を収録
落語研究会 特選名演集（ソニー・ミュージックダイレクト） - 昭和41年（1966年）収録の『二番煎じ』映像を収録

また、又甥に俳優・歌手として活動する真人大樹がいます。

もう一度検索