三国志平話

『三国志平話』の概要とあらすじ

『三国志平話』は、三国時代の魏、呉、蜀漢の歴史を描いた中国の古典文学であり、白話文学の中でも最古の形式とされています。この書は、元代に『全相平話五種』の一部として刊行され、上巻、中巻、下巻の3巻から構成されています。各ページには絵が描かれていて、視覚的な魅力も備えていますが、その内容には『三国志演義』とは異なる民間伝承や通俗的な要素が色濃く含まれています。

概要

物語は、司馬仲相が冥土で判決を下す場面から始まります。彼は漢朝の功臣である韓信、彭越、英布を殺した劉邦とその妻呂后に対して裁判を行い、三人に転生の運命を与えます。このプロローグから最終的に物語は劉淵の漢再興と晋の滅亡に至るまでの大河ドラマを描いていきます。『三国志平話』におけるストーリーは、民間伝承を基にしているため、時には荒唐無稽な展開も見られますが、これがかえって魅力を増しています。また、平話の中には『三国志演義』に見られるエピソードが存在せず、その多くは後の創作であることが研究者によって示唆されています。

あらすじ

物語はプロローグから始まり、上巻、中巻、下巻、そしてエピローグに分かれています。

プロローグ

冥土での裁判が開かれ、司馬仲相が関与することになります。彼は原告として韓信らを、被告として劉邦と呂后を呼び寄せ、300年にも及ぶ未決審のケースを裁きます。この裁判の結果、天帝は韓信を曹操、彭越を劉備、英布を孫権に転生させるといった設定から物語が始まります。

上巻

建寧元年、霊帝の周囲には十常侍という宦官たちが政権を私物化し、国家は腐敗していきます。霊帝は驚くべき怪事に遭遇し、天変地異の前触れとされる洞窟の調査を命じます。同時に、泰山の麓で孫学究という男が自殺を試みるも、洞窟に飛び込んで古い医書を発見し、病を治す力を得る話が展開されます。彼のもとには次々と病人が訪れ、医術を広めるため弟子の張角に医書を授けます。張角は後に太平道を立ち上げることになります。

この宗教運動は次第に勢力を拡大し、後漢政府に対抗する力となります。184年、黄巾の乱が勃発し、流血と混乱の一因となります。

中巻

曹操は劉備を取り込もうとし、彼とその兄弟は曹操の元で成長していく。しかし、権力闘争は徐々に激化し、劉備の名声と立場は試練に直面します。

下巻

周瑜との水面下での争いが続き、劉備暗殺計画は失敗に終わります。劉備と周瑜、それぞれの思惑が交錯する中で、物語はさらなる緊迫感をもたらします。

エピローグ

孔明の死後、姜維の策略は続き、最終的に漢の復興が語られます。劉淵は北方に逃れ、漢を再興することで物語は締めくくられます。このように『三国志平話』は、英雄たちの運命が交差する壮大な歴史絵巻として描かれています。その過程で、中国の歴史と文化における道徳観や人間関係が反映され、時代を超えたメッセージを私たちに伝えているのです。

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