三好晋六郎

三好 晋六郎（みよし しんろくろう）

日本の近代造船学の発展に多大な貢献をした造船学者。安政4年（1857年）7月21日に江戸（現在の東京都千代田区猿楽町）で生まれ、明治34年（1910年）1月28日に逝去しました。大審院判事として知られる永井岩之丞は実兄にあたります。

教育と海外での研鑽

工部大学校（現在の東京大学工学部の前身）で学び、首席で卒業。その後、造船技術の中心地であったイギリスへ留学し、グラスゴーのロバート造船所とグラスゴー大学で造船学および船舶用の機関学を深く修めました。この海外での経験は、帰国後の活動の基盤となります。

造船技術教育への貢献

明治16年（1883年）に帰国後、工部省の御用掛として職務に就きました。翌明治17年（1884年）には母校である工部大学校の助教授となり、明治19年（1886年）には教授に昇任。造船学の専門家として、将来を担う技術者たちの教育に情熱を注ぎました。その教育活動は、日本の近代的な造船技術を確立する上で不可欠なものでした。

啓蒙と学校設立

造船分野に関わる人々の知識向上を図るため、明治18年（1885年）には学会で木船と鉄船の構造や性能に関する比較論を発表しました。さらに、より実践的な技術者を育成する必要性を痛感し、明治20年（1887年）には工手学校（現在の工学院大学）を設立。初代校長として、多くの実務家を社会に送り出しました。

技術的業績

教育者としてだけでなく、船舶の設計においても優れた才能を発揮しました。彼が手掛けた蒸気船の設計は、日本国内で入手可能な材料と、海外で習得した最先端技術を巧みに組み合わせたものであり、その優秀さから当時の模範とされたと言われています。明治26年（1893年）には通信省の嘱託を務め、明治29年（1896年）には日本における最初の造船規定を制定するなど、国の制度整備にも貢献しました。

学会の設立

明治30年（1897年）、造船技術の進歩と普及を目的として造船協会（現在の日本船舶海洋工学会）を創立しました。この組織の副会長および理事を歴任し、日本の造船界全体の発展に寄与しました。

栄典と学位

長年の教育活動と海事分野への貢献が高く評価され、明治30年（1897年）には正三位勲三等に叙されました。さらに、明治32年（1899年）には工学博士の学位が授与され、その学術的功績が公に認められました。

最期と追悼

明治43年（1910年）、大学での講義中に脳出血で倒れ、教授室で看護を受けましたが、そのまま帰らぬ人となりました。前年には、教え子たちが三好の在職25周年を記念して奨学資金を拠出したばかりであり、その資金の一部を活用して三好懸賞論文制度が発足されました。

人物像と顕彰

三好晋六郎は、謹直で物事に真摯に取り組み、細部にまで気を配る一方で、常に謙遜な人柄であったと伝えられています。その偉大な業績と優れた人徳を称え、後世にその功績を伝えるため、東京大学工学部の船舶試験水槽の前には彼の胸像が建立されています。

栄典等

位階
明治30年（1897年）7月10日 - 正五位
明治43年（1910年）1月29日 - 従三位
勲章
明治29年（1896年）12月25日 - 勲六等瑞宝章
明治39年（1906年）4月1日 - 旭日中綬章
* 明治43年（1910年）1月29日 - 勲二等瑞宝章

もう一度検索