三宅御土居跡

三宅御土居跡：益田氏の歴史を今に伝える史跡

三宅御土居跡は、島根県益田市三宅町に位置する、かつての城館です。七尾城（益田城）と共に、国の史跡「益田氏城館跡」としてその名を刻んでいます。この地は、平安時代末期に石見国の国司として下向し、建久年間に益田荘を拠点とした益田氏の居館であり、七尾城はその詰めの城として築かれました。

築造の背景と変遷

築造者や正確な時期は不明ですが、一般的には室町時代の応安年間（1368年-1375年）に益田兼見によって築かれたとされています。益田川の水運、特に益田本郷地域への流通、そして農業用水の管理という重要な役割を担い、益田川下流の川沿いにその姿を現しました。

戦国時代後期、益田藤兼は毛利元就と対立し、一時的に七尾城を本拠としましたが、後に毛利氏と和睦。その傘下に入ると、藤兼の子である益田元祥は三宅御土居へと戻り、大規模な改修を行ったと伝えられています。しかし、関ヶ原の戦いで毛利氏が敗れ、周防・長門へと移封されると、元祥もまた長門国須佐へと移り、三宅御土居はその役割を終え、廃城となりました。

寺院による保護と復元

安土桃山時代には、益田家の家臣である鬼村平左衛門尉祐光らが、この地に松龍山泉光寺を創建し、御土居を守護しました。このことが、近現代の都市開発による遺構の破壊を免れる大きな要因となりました。

その後、三宅御土居跡と七尾城跡は、昭和40年代に県の史跡としてその価値が認められました。昭和58年7月の豪雨で益田川が氾濫し、甚大な被害を受けた益田市は、新たな都市計画を進める中で、この史跡の重要性を再認識。発掘調査の結果を基に復元された「おどい広場」などが整備され、平成16年（2004年）には七尾城と共に国の史跡指定を受けるに至りました。なお、泉光寺は、三宅御土居跡の発掘調査と史跡整備に伴い、平成19年（2007年）に移転しています。

遺構：堀と土塁が語る歴史

居館跡の敷地は、東西約190メートル、南北約110メートルと、およそ二町分の広大な規模を誇ります。特筆すべきはその形状で、東辺が北側に長く伸びたブーツ形をしており、非常に珍しい形をしています。敷地の東西両辺には土塁が残り、東土塁は長さ87メートル、高さ5メートル、西土塁は長さ53メートル、高さ4.5メートルを測ります。南側にも高さ1.5メートルの土塁跡が見られますが、一部が途切れており、その形状から正面出入口（虎口）の可能性が指摘されています。

居館跡の周囲には、全周にわたって堀が設けられ、益田川から引き込まれた水で満たされた水堀でした。東西土塁の外側の堀は幅10メートル、深さ2.5〜3メートルの箱堀、北側の堀は幅10〜16メートル、深さ1.5メートル。南側は幅20〜25メートルの川をそのまま堀として利用していました。当初は幅4.2メートル、深さ1.5メートル程度の浅い堀が存在していましたが、後代に埋め立てられ、帯曲輪となっています。

発掘された建物跡

堀内からは、各時代の建物跡や出土品が多数発見されており、13世紀の木組み井戸跡、16世紀の礎石建物跡、石積み井戸跡、鍛冶場跡、そして12世紀から16世紀にかけての掘立柱建物や陶磁器などが出土しています。居館跡の西側には御殿や庭園などの私邸部、東側には政治を執り行う邑政堂や鍛冶場、米蔵などの公的施設部があったと考えられています。

特に、多数の柱穴が見つかった西側の掘立柱建物は、12世紀から16世紀にかけて何度も建て替えられていたことがわかっています。保存整備されたおどい広場では、6棟の掘立柱建物跡が時代ごとに色分けされ、異なる金属の埋め込み板で建物跡を表示し、その変遷を視覚的に伝えています。

三宅御土居跡は、益田氏の歴史と文化を今に伝える貴重な史跡であり、その遺構や出土品は、当時の生活や政治、文化を理解するための重要な手がかりとなっています。

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