益田藤兼

益田藤兼（ますだ ふじかね）

益田藤兼は、戦国時代の武将であり、石見国の国人領主であった益田氏の第19代当主です。

生涯

石見での事跡

享禄2年（1529年）に石見国で生まれました。周防・長門を治める大内氏の傘下の国人領主の一人として活動しました。天文12年（1543年）の第一次月山富田城の戦いが初陣とされ、当時15歳でした。翌天文13年（1544年）には祖父である益田宗兼の死去に伴い、益田氏の家督を継承しました。父の尹兼は藤兼の資質を見抜き、自らは家督を継がずに藤兼を補佐し、益田氏を盛り立てたとされています。藤兼という名は、尹兼が将軍足利義藤（後の義輝）から一字を賜って名付けられたものと思われます。

主君である大内義隆と重臣の陶隆房（晴賢）との関係が悪化する中、藤兼は近隣の国人領主である吉見氏と所領を巡って争いました。大内義隆が陶晴賢によって討たれた後には、一族の三隅兼隆を討伐し（兼隆は降伏して逃亡）、周布氏当主の周布元兼を従えるなど、勢力拡大に尽力しました。

大内氏重臣として活動

天文20年（1551年）、陶晴賢が大内義隆に対して謀反を起こすと、益田氏は陶氏と姻戚関係にあったため、晴賢に協力し義隆を自害に追い込みました（大寧寺の変）。当時石見にいた藤兼は、吉見氏の所領に侵攻しましたが、吉見氏の反撃を受け退却しました。その後、相良武任の子である虎王を石見で捕らえ殺害しました。その後、晴賢が擁立した大内義隆の甥・大内義長に外交手腕を評価され重用されました。

天文20年から24年（1555年）にかけて、藤兼は吉見領に侵攻しましたが、吉見正頼率いる吉見勢の抵抗も激しく、決着はつきませんでした。天文23年（1554年）には、大内氏の大軍が三本松城を攻撃するも、落城させることはできず、最終的には吉見正頼との間で講和が成立しました。同年、陶晴賢の命令で尼子晴久との同盟を締結しました。

しかし、天文24年の厳島の戦いで、陶晴賢が毛利元就の奇策によって討死すると、藤兼は大内義長と共に毛利元就の最大の標的となりました。

毛利氏に降る

弘治2年（1556年）には、毛利元就の次男である吉川元春が石見に侵攻を開始しました。藤兼は七尾城を増改築し、居城を移しました。しかし、弘治3年（1557年）3月には毛利氏に降伏しました。同年4月には元就が大内義長を自害に追い込み、大内領をほぼ手中に収めました（防長経略）。

毛利元就は、藤兼がかつて大内義隆を討ったことや、長年吉見正頼と対立していたことを理由に処刑を考えていましたが、吉川元春がその武勇を惜しんで助命したため、本領を安堵され、以後は毛利氏の家臣となりました。永禄4年（1561年）には福屋隆兼が反乱を起こすと討伐に赴き、永禄5年（1562年）には長年の懸念であった吉見氏との所領問題を毛利氏の裁定によって解決しました。

吉川軍に従軍

永禄6年（1563年）頃より、毛利元就は尼子氏を倒すために軍を動かしました。白鹿城を落とし、永禄8年（1565年）には月山富田城を包囲しました。この時、広瀬川で藤兼の家臣である品川勝盛が山中幸盛と一騎討ちを行い、討死しました。しかし、尼子氏は大勢を覆すことができず、翌永禄9年（1566年）に降伏しました（第二次月山富田城の戦い）。

永禄10年（1567年）以降は、尼子氏や大友氏との戦いで出雲・伯耆・豊前を転戦して活躍しました。元亀元年（1570年）には家督を嫡子の元祥に譲りました。同年、石見で反乱を起こした三隅隆繁・国定兄弟を討伐して大いに戦功を挙げました。その後は元祥に元春の娘を娶わせるなどして毛利氏との関係を強めました。翌元亀2年（1571年）にも布部山の戦いで吉川軍の一部として尼子再興軍を撃破しました。

老境に入ると、所領の神社仏閣を再建し、手厚く保護し、慶長2年（1597年）に死去しました。

もう一度検索