三岐鉄道601系電車

三岐鉄道601系電車

三岐鉄道601系電車は、かつて三岐鉄道三岐線で活躍した通勤形電車です。1981年（昭和56年）から1988年（昭和63年）にかけて、西武鉄道から譲渡された451系電車と571系電車を基に導入されました。この導入は、三岐線の輸送力増強と車両の大型化を目的としたものでした。

概要

601系は、先に導入された501系（元西武501系電車）が西武時代の車両番号をそのまま使用したのに対し、新たな形式区分が与えられました。具体的には、制御電動車であるクモハ601形と制御車であるクハ1601形が連結され、編成を構成しました。各車両の番号は、クモハ601-クハ1602、クモハ603-クハ1604のように連番で、クモハ601形は奇数番号、クハ1601形は偶数番号で統一されました。

この601系によって置き換えられたのは、自社発注のモハ120形、モハ130形、クハ210形といったカルダン駆動の新性能車でした。それらが、吊り掛け駆動の旧性能車である601系に置き換えられるという珍しい事例となりました。

導入は2段階に分かれており、1981年12月から1982年3月にかけて451系電車を種車とする601 - 605編成（2両編成3本）が、1988年2月には571系電車を種車とする607編成（2両編成1本）が導入されました。前者のグループは1997年10月まで、後者は2009年2月まで運用されました。

仕様

車体

4編成すべてが、切妻形状の前面を持つ20m級3扉車体という点で共通しています。しかし、451系電車を種車とする601 - 605編成は、前面の行先表示器が向かって左側の窓の内側に設置されていましたが、571系電車を種車とする607編成は、前面向かって左側の幕板部に独立した行先表示窓がありました。また、屋根上のベンチレーターの種類、連結面貫通路の幅、乗務員扉の形状や材質、乗務員扉部の手すりの形状など、種車による細かな違いが見られました。

主要な相違点

導入に際しては、前照灯が三岐鉄道仕様の大型ケースタイプに交換され、車体塗装もイエロー地に車体裾周りがオレンジという三岐鉄道の標準塗装に変更されました。その他には大きな改造は行われていません。607編成とクハ1602・1604は、西武在籍時に側面のアルミサッシが無塗装でしたが、塗装変更時にサッシ部分も車体と同色に塗りつぶされました。

主要機器

601 - 605編成は、制御器と主電動機に国鉄制式の電空カム軸式CS5制御器とMT10またはMT15主電動機を搭載していました。台車は、クモハ601形がTR14A、クハ1601形がTR11Aといずれも省形釣り合い梁式台車を装備していました。これらの機器は全て西武時代からのもので、導入時に変更はありませんでした。

一方、607編成は、制御器がCS5、主電動機がMT15と西武時代のものをそのまま使用していましたが、台車は三岐鉄道に納入時に装備していた住友金属工業製のペデスタル式空気ばね台車FS40から、整備の際にクモハ607はTR14Aに、クハ1608は小田急電鉄2400形電車の廃車発生品である住友金属工業製のアルストムリンク式台車FS30に換装されました。

導入後の変遷

601 - 605編成は、1984年3月に台車を京王帝都電鉄デハ1900形電車の廃車発生品である日立製作所製上天秤式ウィングばね台車KBD-107に交換し、乗り心地の改善を図りました。さらに、クハ1604は1988年に小田急2400形電車の廃車発生品であるアルストムリンク式台車FS330に、クハ1606は1993年に西武701系列の廃車発生品であるペデスタル式ウィングばね台車FS342に換装されました。また、607編成も導入後すぐにクハ1608の台車をFS330に交換し、1989年にはクモハ607の台車をKBD-107に交換し、他編成と台車の仕様を統一しました。

その他、603・605編成は西武鉄道から購入した解体発生品を利用して、客用扉のステンレス無塗装化、側窓サッシの無塗装化、乗務員扉のステンレス小窓化が実施されました。607編成も客用扉のステンレス無塗装化が行われました。一方で、601編成は乗務員扉のステンレス小窓化のみで、比較的導入当時の原型を保ったまま運用されました。

その後、冷房車である101系（元西武401系電車）の導入に伴い、601編成が1992年5月20日付で本系列初の廃車となりました。603・605編成も801系（元西武701系電車）の導入によって、1997年6月15日付で603編成、同年10月12日付で605編成が相次いで廃車となり、西武451系電車を種車とするグループは全廃となりました。なお、605編成は廃車前日の1997年10月11日に「鉄道の日」記念イベントとしてさよなら運転が実施されました。

唯一残った607編成は、他の系列とともに一般運用に使用された他、三岐線唯一の吊り掛け駆動車として各種イベントで重用されました。1998年にはクハ1608の台車がクハ1606の廃車発生品であるFS342に交換されるなど、手を加えられながら運用されました。しかし、751系（元西武新101系電車）の導入により廃車の方針が決定し、2009年2月1日にさよなら運転が行われ、翌2月2日付で廃車となりました。607編成はパンタグラフなどを取り外した状態で伊勢治田駅に留置されていましたが、現存しません。

607編成の廃車をもって本系列は形式消滅し、同時に三岐鉄道は三岐線に在籍する全車両のカルダン駆動化と冷房化率100%を達成しました。

車歴・編成

（詳細な車歴・編成については、参考文献を参照してください）

脚注

(注釈、出典、参考文献については、原文の情報を参照してください)

関連項目

他社の西武451系譲渡車

上信電鉄100形電車 - クモハ100形全車、クハ100形クハ101 - クハ103
一畑電気鉄道80系電車

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