三島中洲

三島中洲（みしま ちゅうしゅう）

三島中洲（1831年 - 1919年）は、幕末から明治・大正にかけての漢学者、教育者であり、二松學舍の創立者として知られています。彼の生涯は、激動の時代における学問の探求と、人材育成への情熱に彩られています。

生涯

備中国（現在の岡山県倉敷市）に生まれた三島中洲は、幼少の頃から学問に励み、山田方谷や斎藤拙堂といった著名な儒学者に師事しました。黒船来航を機に日本の危機を痛感し、昌平黌で佐藤一斎や安積艮斎に学びました。帰郷後は藩校で陽明学を教えましたが、西洋の技術を取り入れることも主張したため、一部からは疎まれました。

明治維新後、政府に出仕し大審院判事を務めましたが、後に辞職し、漢学塾二松學舍を創設しました。これは、後の二松學舍大学へと発展します。中洲は漢学の重要性を説きながらも、西洋の学問にも理解を示し、バランスの取れた教育を目指しました。

幼少時代と学問の道

里正の家に生まれた中洲は、幼い頃から寺子屋で学び、四書五経を素読しました。山田方谷の私塾・牛麓舎では塾長を務め、斎藤拙堂からは儒学を深く学びました。これらの経験が、彼の人格形成と学問の基礎を築きました。

江戸での学びと藩政への貢献

江戸では昌平黌で学び、佐藤一斎や安積艮斎といった一流の学者に師事しました。帰郷後は藩校で教鞭を執り、学制改革にも尽力しました。また、漢学塾を開き、多くの若者を育成しました。中洲は儒学だけでなく、西洋の学問にも理解を示し、その知識を藩政に活かそうとしました。

二松學舍の創立と漢学の再興

明治維新後、漢学の衰退を憂いた中洲は、中村敬宇、重野安繹、川田甕江らと共に経国文社を設立し、1877年に漢学塾二松學舍を創立しました。二松學舍は、漢学の振興と人材育成を目指し、多くの卒業生を輩出しました。中洲は、二松學舍を通じて、日本の教育と文化に大きく貢献しました。

教育観と義利合一論

中洲は、孔孟の教えを重視しながらも、西洋の学問にも理解を示すというバランスの取れた教育観を持っていました。彼は、「今の世に生まれて古の道に反せざるをこひねがひ、常に此を以て自ら律す」と述べ、伝統と革新の融合を目指しました。

また、中洲は、山田方谷の藩政改革での経験から、「義利合一論」を唱えました。これは、利益を追求するだけでなく、義にかなった方法で利益を得るべきであるという思想です。この思想は、実業家の渋沢栄一にも影響を与え、二人の交流を深めるきっかけとなりました。

書道への支援

中洲は、書道の振興にも尽力し、比田井天来をはじめとする多くの書家を育成しました。彼自身も書をよくし、多くの碑文を撰文しました。二松學舍は、書道においても優れた人材を輩出し、日本の書道界に大きな影響を与えました。

逸話

伯備線方谷駅の駅名は、中洲の師である山田方谷に由来しています。当初、鉄道省は人名を駅名にすることに難色を示しましたが、中洲の尽力により実現しました。この逸話は、中洲の人柄と、彼が社会に与えた影響の大きさを物語っています。

著作

中洲は、多くの著作を残しました。

『霞浦游藻』
『三日文詩』
『中洲詩稿』
『中洲文稿』
『虎口存稿』
『詩書輯説』
『論学三絶』
『孟子講義』
『探辺日録』
『論語講義』

これらの著作は、彼の学問と思想を後世に伝える貴重な資料となっています。

三島中洲は、激動の時代に、教育者、漢学者として、日本の近代化に貢献した偉人です。彼の教育理念と業績は、今もなお、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

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