三条宗近

三条宗近について

三条宗近（さんじょう むねちか）は、平安時代中期に山城国（現在の京都府）で活躍したとされる刀工です。京の三条に住んでいたことからこの名で呼ばれています。一条天皇の治世、10世紀末頃の人物と伝えられていますが、正確な年代については諸説あります。

伝説では、一条天皇の宝刀「小狐丸」を鍛えたとされており、この逸話は謡曲「小鍛冶」にも取り上げられています。しかし、この時期の作刀に年紀のあるものはなく、確証も乏しいことから、多くは伝説として扱われています。実年代については、10世紀から12世紀まで幅があると考えられています。

日本刀が直刀から反りのある彎刀へと変化する時期に活躍した名工として知られ、現存する作品は非常に少ないものの、「宗近」または「三条」と銘が切られたものがわずかに確認されています。

三条宗近の作風

宗近の作風は、地鉄（じがね）と呼ばれる刀身の地肌が板目肌（いためはだ）でよく詰み、地沸（じにえ）と呼ばれる粒子状の模様が細かく現れるのが特徴です。刃文（はもん）は小乱れ（こみだれ）で、匂（におい）と呼ばれる淡い光彩が深く、小沸（こにえ）と呼ばれる微細な沸が付き、特に三日月形の「打ちのけ」と呼ばれる刃文が見られることがあります。

三条宗近の主な作刀

三条宗近の作刀として伝えられている刀剣は数多くありますが、現存するもので確実なものはごくわずかです。以下に、主なものを紹介します。

太刀　銘 三条（名物 三日月宗近）
国宝に指定されており、徳川将軍家伝来の名刀として知られています。現在は東京国立博物館に所蔵されています。詳細は「三日月宗近」の項目を参照してください。
太刀　銘 三条
重要文化財に指定されており、岐阜県の南宮大社に所蔵されています。小板目肌の地鉄に地沸が付き、小乱れ刃に尖刃が交じる美しい刀です。毎年文化の日に一般公開されています。
太刀 銘 宗（以下一字不明）伝宗近
重要文化財に指定されており、福井県の若狭彦神社に所蔵されています。板目肌の地鉄に細かな沸が付き、小乱れ刃に梵字が刻まれているのが特徴です。現在は東京国立博物館に寄託されています。
海老名宗近
短刀。足利義政が所持していたと記録されていますが、大坂の陣で消失したとされています。徳川美術館には「宗近」銘の焼身の短刀が所蔵されています。
鷹巣三条
短刀。豊臣秀吉が所持していたとされる名物です。享保名物帳にも記載されています。
小狐丸
太刀。九条家に伝来していましたが、所在不明となっています。
松代藩真田氏伝来の太刀
松代藩真田氏が所持していたとされる太刀で、刀身は奈良県に所在しますが、銘の真偽は不明です。
八代城主松井氏伝来の太刀
無銘ですが、宗近の作と伝えられ、黒漆鞘刀拵が現存しています。
山城国宗近御太刀
皇室の御物で、宮内庁が管理しています。小浜藩酒井氏から献上されたとされます。
太刀 伝宗近
福岡県の筥崎宮に所蔵されており、福岡県指定有形文化財に指定されています。
小国神社所有の太刀2口
静岡県の小国神社に所蔵されており、徳川家康が戦勝祈願で奉納したと伝えられています。
太刀 銘 伝三条小鍛冶宗近作
愛媛県の一宮神社に所蔵されており、新居浜市指定文化財に指定されています。
三条宗近銘太刀
島根県の宍道氏に伝来したとされます。松江市指定文化財に指定されていますが、室町時代の作ではないかという見解も存在します。
八多神社所有の脇差
兵庫県の八多神社に所蔵されている脇差で、宗近が奉納したと伝えられています。ただし真偽は定かではありません。
三条小鍛冶宗近作太刀
日蓮聖人が所持していたとされる太刀。
三条小鍛冶宗近作御太刀
祇園祭の占出山に伝わる御神体の太刀。三条宗近の作かどうかは不明。
穴守稲荷神社所有の太刀
穴守稲荷神社に奉納されましたが、空襲で焼失。

まとめ

三条宗近は、日本刀の歴史において重要な人物であり、その作風は後世の刀工にも大きな影響を与えました。現存する作品は少ないものの、その名は今もなお多くの人々に語り継がれています。彼の作刀は、単なる武器としてだけでなく、芸術品としても高く評価されています。資料が少ないため、不明な点も多いですが、数々の伝説に彩られた名工であることは間違いありません。

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