三美神 (ルーベンス、パラティーナ美術館)

ピーテル・パウル・ルーベンスの『三美神』

『三美神』（さんびしん、伊: Tre Grazie a monocromo、英: The Three Graces）は、フランドルのバロック期を代表する画家ピーテル・パウル・ルーベンスが、1622年から1623年頃に板上にグリザイユ（単色画法）で描いた作品です。この絵画は、ギリシア神話に登場する美と優雅さを象徴する三柱の女神、アグライア、エウプロシュネー、タレイア（カリス）を描いています。彼女たちは、愛と美の女神ヴィーナスの従者として知られています。

作品の来歴

この作品は、ブリュッセルに派遣された教皇特使で司祭のフランチェスコ・アイロルディによって取得され、ルーベンスの熱心な支持者であったレオポルド・デ・メディチ枢機卿に贈られました。枢機卿の美術コレクションは、彼の死後フィレンツェのウフィツィ美術館に移管されましたが、1928年以降はパラティーナ美術館に所蔵されています。

作品の特徴

ギリシア神話における三美神は、通常、裸体で左右対称に配置され、互いに抱き合う姿で表現されます。ルネサンス期には、人文主義者たちの関心を集め、ラファエロの『三美神』など、多くの画家がこの主題を描きました。ルーベンスもまた、プラド美術館に所蔵されている『三美神』など、複数の作品でこのテーマに取り組んでいます。

本作では、中央の女神が正面を向き、画面左側の女神と視線を交わしています。右側の女神は鑑賞者の方へ目を向け、右手を中央の女神の肩に、左手を彼女の腕に絡ませています。三美神の頭上には、2人のプット（幼い天使）が花輪を授けようとしており、さらに、果物籠の背後に1人、画面左側にもう1人のプットが描かれています。プットは伝統的にヴィーナスと共に描かれることが多く、本作では、三美神とヴィーナスの関係性が示唆されています。

この作品の制作時期は、ルーベンスの連作「マリー・ド・メディシスの生涯」に含まれる『マリー・ド・メディシスの教育』と同時期（1622-1623年頃）と考えられています。特に、右側の女神は『マリー・ド・メディシスの教育』に描かれている右側の女神とよく似ており、また、左側と中央の女神についても、『マリー・ド・メディシスの教育』の初期の油彩スケッチに類似した表現が見られます。

さらに、本作に描かれた人物像の頭部が小さく、身体が長く描かれているプロポーションは、マニエリスム様式を彷彿とさせます。ルーベンスは1622年にパリを訪れた際、フォンテーヌブロー宮殿でマニエリスム期の画家フランチェスコ・プリマティッチオのストゥッコ（漆喰）レリーフの女性像から影響を受けた可能性が指摘されています。また、ルーベンスは古代文化にも造詣が深かったため、古代レリーフを基に本作を制作した可能性も考えられます。グリザイユ技法と奥行きの浅い構図は、象牙製のレリーフを模倣したものであるという見解もあります。

ギャラリー

（画像は省略）

脚注

（脚注内容は省略）

参考文献

『ルーベンス　栄光のアントワープ工房と原点のイタリア』、Bunkamuraザ・ミュージアム、毎日新聞社、TBS、2013年刊行

外部リンク

イタリア語）'>Polo Musealeサイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『三美神』
* 英語）'>Web Gallery of Artサイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『三美神』

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