三苗人

三苗人の伝説

三苗人（さんびょうじん）は、古代中国に伝わる伝説上の人種であり、三毛苗民（さんもうびょうみん）とも呼ばれています。彼らは主に南方に棲息していたとされ、古代の地理書『山海経』に記述されています。この書によれば、三苗国は貫匈国の西側に位置し、三苗人は人間の姿を持ちながらも、常に誰かと寄り添って歩くという特異な特徴があったとされています。

地理的背景

『山海経』の「海外南経」や「大荒南経」の記述によると、苗民は讙頭の子孫であり、彼らは肉食を好むことで知られています。また、『神異経』の記録では、彼らの脇の下には翼が生えていたとも考えられています。興味深いことに、三苗人の名称は、渾沌（こんとん）、窮奇（きゅうき）、饕餮（とうてつ）の三名の末裔を示すものとも言われています。彼らは時おり蚩尤に従っていた九黎たちの一部とも見なされていました。

三苗人の多様性

三苗人は「南蛮」という表現でも言及され、広義には部族や村落単位で生活している民族を指し、特定の王朝の支配を受けていない様々な民族を含むと考えられています。明の時代には「苗蛮」という表現が使われるようになっており、彼らの存在は長い間、中国南部の歴史に影響を与えてきたことがわかります。

丹朱との関連

有名な三苗人の一人である論戚誼は、讙頭の祖先である丹朱と共に堯（ぎょう）に対して反乱を起こしました。彼らの反乱の際には、丹魚の血を足の裏に塗り、水の上を歩くための術を使ったという言い伝えがあります。この反乱は最終的に失敗し、人々は南方に逃げ、三苗国が形成されるための基盤が築かれました。

王朝との対立

伝説では、三苗人は古代の様々な王朝と対立を続けたとされています。堯との戦い以降も、舜や禹の時代において苗民は服従を拒否し、禹がこれを討伐すべきと進言する場面も見受けられます。しかし、舜は武力による征伐ではなく、道徳的な教化によって対処したという逸話は、古代において徳が重要視されていたことを示唆しています。

三苗の末裔

王符の『潜夫論』には、「危」氏が三苗の後裔であるとの記述があり、今日のミャオ族（苗族）の祖先も三苗に由来すると考えられています。ただし、この関係は明確には解明されていません。ミャオ族については、宋や明の時代に彼らが文献に登場し、武陵蛮の子孫とされている点が注目されています。

また、三苗人たちは後に南蛮や荊蛮と呼ばれ、歴史の中で中国南部の民族として重要な役割を果たしました。歴史学者の徐松石は、南蛮と称される民族の中に元々の漢族が南方民族と混血した結果としてミャオ族が形成されたという説を唱えています。さらに、一部の考古学者は、ミャオ族の系譜をたどると、日本列島に渡った祖先が存在した可能性があるとの仮説を立てており、ミャオ族の銅鼓と日本の銅鐸の類似点がその根拠とされています。

結論

三苗人の伝説は、古代中国の歴史や文化、民族の多様性を理解する上で重要な要素となっています。彼らの物語は今日でも語り継がれ、様々な民族との関係の中でその存在を見守る役割を果たしています。

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