上州街道

上州街道とは

上州街道は、現在の長野県上田市から群馬県高崎市に至る街道の、上州（上野国）側の呼称です。この街道は、信濃国と上野国を結ぶ複数のルートから構成されており、特に重要なのは、以下の4つの街道です。

上州街道（上田 - 大笹 - 高崎）: 本項目における上州街道は、上田から大笹宿を経由して高崎に至るルートを指します。
信州街道（福島 - 大笹 - 高崎）: 須坂市福島から大笹宿を経由して高崎に至るルートです。上野国側では、この街道も上州街道と呼ばれます。
大笹街道（福島 - 大笹）: 信州街道のうち、福島宿から大笹宿までの区間を指します。仁礼街道とも呼ばれます。
大日向道（上田 - 大笹）: 上田から大笹宿に至る別のルートで、大日向を経由するため、この名で呼ばれます。

これらの街道は、中山道や北国街道のバイパスとして、江戸時代に重要な役割を果たしました。

街道の概要

上州街道は、高崎と上田、須坂、善光寺を結ぶバイパスとして機能しました。特に須坂周辺から高崎へ向かう場合、北国街道や中山道よりも距離や日数が少なく、利便性が高かったため、多くの人々や物資がこの街道を利用しました。須坂藩主が参勤交代で江戸へ往復する際にもこの街道が用いられ、その重要性がうかがえます。

大笹宿は、中山道の沓掛宿とも沓掛道で結ばれており、信濃国からの荷物が沓掛宿へ運ばれることも多く、物流の中継地点として栄えました。福島宿から沓掛宿まで北国街道・中山道経由で移動すると10宿・20里の距離が必要でしたが、大笹街道・沓掛道を利用すれば2宿・14里で済んだため、輸送費や時間短縮の面で大きなメリットがありました。

しかし、この利便性の高さから、北国街道の利用が減少したため、慶安3年（1650年）には北国街道の宿場町から訴訟が起こりました。その結果、松代より西の者は北国街道を、東の者は大笹街道を通ることが定められましたが、東の者も北国街道を通行することが許可されました。また、飯山・須坂・松代の3藩の江戸への廻米も、信州街道の利用が公に認められていました。

また、高崎から草津へ向かう草津街道とも一部重複しており、草津温泉への湯治客で賑わいました。さらに、白根・万座・殺生河原で産出された硫黄の輸送にも、この街道が活用されました。

各街道の行程

大日向道（上田 - 大笹）

上田を起点とし、伊勢山で神川を渡り、荒井で松代街道と交差します。その後、真田、横沢、大日向、菅平口、渋沢を経由して鳥居峠を越え、大笹街道と合流して大笹宿に至ります。大日向道と大笹街道の鳥居峠は異なる位置にあり、現在一般的に知られる鳥居峠は大日向道側の峠です。

大笹街道 / 仁礼街道（福島 - 大笹）

福島宿（須坂市福島）を起点とし、鮎川沿いに井上、八丁、仁礼宿へと上ります。仁礼から鳥居峠へ向かう道は現在とは異なり、宇原沢川に沿って大谷不動を経由し、明神沢で現在の道筋と合流します。この区間は標高1300メートルを超える難所で、冬期は通行困難となることもありました。大明神沢には茶屋があり、仙仁峠道、保科道との合流地点でもありました。大笹街道の鳥居峠は、現在よりも約500メートル北側にありました。

鳥居峠を越えて上野国に入ると、2キロメートルで大日向道と合流し、田代を経て大笹宿に至ります。

大笹 - 三ノ倉

大笹宿の入口には、鹿籠川に架けられた刎橋があり、その断崖上に大笹関所が置かれていました。寛文2年（1662年）に沼田藩主・真田伊賀守が江戸幕府に願い出て設置が許可され、翌年に建築されました。関所では女性が厳しく取り締まられたため、関所を通らない抜け道（女人道）が存在し、道中には善光寺への道を示唆する句が刻まれた「抜道の碑」が建てられています。

大笹宿から鎌原宿へ向かうルートには、吾妻川を二度渡るルートと、遠回りだが川を渡らないルートの二説があります。鎌原宿は、浅間山の天明大噴火で大きな被害を受けた村で、現在の街道は再興されたものです。

鎌原宿から狩宿宿へ向かう途中には、廃道や畑になっている区間もあります。狩宿宿には狩宿関所が置かれており、大笹関所と同様に真田氏が設置したものが後に幕府の許可を得て公式な関所となりました。狩宿関所は信州街道よりも、沓掛道から草津へ向かう人々を取り締まることが主な目的でした。

狩宿からは万騎峠を越えて須賀尾宿へ向かいます。万騎峠には、源頼朝にまつわる伝説が残っています。万騎峠を越えると、草津から長野原を経由して須賀尾峠を越える草津街道と合流します。須賀尾宿は元和4年（1618年）に設置された宿場です。

須賀尾宿を抜けると、大戸関所の手前で原町に向かう道と合流します。大戸関所は寛永8年（1631年）に大戸に移設されました。大戸宿から南下し、忠治地蔵や長井集落を通り、東善寺の前を通過して烏川を渡ります。その後、三ノ倉宿の手前で中山道松井田宿からの道と合流します。

三ノ倉 - 高崎

三ノ倉宿から高崎へは、烏川北岸を通る室田宿経由と、烏川南岸を通る神山宿経由の二つのルートがありました。室田宿は古くから栄え、神山宿は後発でした。室田宿は市座が認められるなど繁栄を遂げ、神山宿には上里見藩の藩庁が置かれた時期もありました。

室田宿経由のルートでは、室田宿を東に出て中島川板橋を渡り、鳥頭峠などを経て高崎宿に入ります。神山宿経由のルートでは、烏川を渡って南岸の断崖を通り、猿落と呼ばれる難所がありましたが、後に新道が開通しました。神山宿を経由して高崎宿へは、下豊岡町で中山道と合流します。

歴史

上州街道の利用は室町時代から記録があり、宗祇や宗長が草津温泉を訪れる際に利用しました。宿駅を整備し、街道として本格的に整備したのは真田氏です。大笹街道は慶安3年（1650年）に江戸幕府から北国街道の脇往還として公に認められました。

明治時代には大笹街道が長野県の県道に加えられましたが、信越本線の全通により大日向道の重要度が増し、改修が進められました。これにより大笹街道は衰退しました。また、群馬県側では吾妻渓谷を越える道路が開鑿されたことで、大戸、万騎峠を通る街道は使われなくなりました。さらに、大正時代には草軽軽便鉄道が開通したことが、街道の貨物輸送路としての利用価値を低下させました。

現在の上州街道

現在の上州街道のルートは、国道144号（群馬県内「信州街道」は国道406号）が踏襲しており、この国道は「信州街道」の通称で呼ばれています。上田市内では、「しなの木通り」という愛称が付けられています。この街道は、上田市街地と上信越自動車道上田菅平ICを結ぶ幹線道路であり、菅平高原への観光道路としても機能しています。

交差・接続する路線

上川原柳町交差点（上田市中央東）: 国道18号（産業道路）
古里西交差点（上田市住吉）: 浅間山麓広域農道（浅間サンライン）
住吉交差点（上田市住吉）: 国道18号（上田バイパス）
上田菅平インターチェンジ（上田市住吉）: 上信越自動車道
住吉北交差点（上田市住吉）: 長野県道180号住吉上田線
伊勢山交差点（上田市上野）: ふるさと農道（戸石米山城街道）
下原交差点（上田市真田町本原）: 長野県道176号下原大屋停車場線
荒井交差点（上田市真田町長）: 長野県道35号長野真田線
（上田市真田町長付近）: 長野県道175号矢沢真田線
横沢交差点（上田市真田町長）: 長野県道4号真田東部線
菅平口交差点（上田市真田町長）: 国道406号
鳥居峠付近（上田市真田町長）: 長野県道182号菅平高原線（大笹街道）

沿道・周辺

上州街道は、戦国大名真田氏発祥の地である真田町を通過するため、周辺には多くの史跡が点在しています。

砥石米山城
真田氏発祥の郷碑
真田氏館跡
真田氏博物館
上田市役所真田地域自治センター（旧 真田町役場）
真田温泉ふれあいさなだ館
真田氏本城跡
渋沢温泉

まとめ

上州街道は、江戸時代に重要な役割を果たした街道であり、その歴史と文化は現在にも受け継がれています。この街道を辿ることで、当時の人々の生活や文化、交通事情を垣間見ることができるでしょう。

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