上平村 (富山県)

上平村

上平村（かみたいらむら）は、かつて富山県東礪波郡に存在した山間部の村です。四方を険しい山々に囲まれ、庄川や境川などの清流が流れる豊かな自然環境の中に位置していました。特に、ユネスコの世界遺産に登録されている「白川郷・五箇山の合掌造り集落」の一部である菅沼集落を含むことで知られ、独特の合掌造り家屋が織りなす景観は、多くの人々を魅了してきました。

地理

上平村の地理は、周囲を山岳に囲まれた地形が特徴です。村域には、笈ヶ岳、大笠山、袴腰山といった標高の高い山々がそびえています。村を流れる主要な河川としては、庄川と境川があります。特に境川を堰き止めて造られた桂湖は、美しい人造湖として、またかつての集落の記憶をとどめる場所としても知られています。

歴史

近代地方自治制度のもと、上平村は1889年（明治22年）4月1日に町村制の施行により、礪波郡上平村として正式に発足しました。以来、独立した自治体としての歩みを進めてきましたが、2000年代に入ってからの「平成の大合併」の波を受け、周辺の自治体との合併を選択します。そして、2004年（平成16年）11月1日、東礪波郡の福野町、井波町、城端町、平村、利賀村、井口村、そして西礪波郡の福光町と合併し、新たに南砺市が誕生しました。これに伴い、上平村は115年の歴史に幕を下ろし、南砺市の一部となりました。合併直前の村長は山本勝徳氏でした。

特徴的な集落：桂

上平村の歴史を語る上で、集団移転した桂集落の存在は重要です。この集落は、庄川水系の境川を挟んで、富山県側の桂と岐阜県側の加須良が一つの生活共同体として長く営まれていました。地名はいずれも植物の「カズラ」に由来すると考えられています。しかし、岐阜県側の加須良集落が1967年（昭和42年）秋に集団離村したことを受け、富山県側の桂集落もその影響から生活基盤の維持が困難となり、1970年（昭和45年）11月に全住民が集団で村を離れることとなりました。この離村に伴い、当時富山県と岐阜県に合わせて5校しか存在しなかったへき地等級5級の学校、上平村立西赤尾小学校桂分校も閉校となりました。現在、桂集落の跡地は、境川ダム建設によって形成された桂湖の湖底に沈んでおり、かつての暮らしを偲ばせるものはほとんど残されていません。

行政と交通

行政面では、石川県門前町（現在の輪島市の一部）と1985年6月8日に友好町村提携を結び、交流を深めていました。

交通網としては、村内には東海北陸自動車道の五箇山インターチェンジが設置されており、高速道路による広域的なアクセスが可能でした。また、幹線道路として国道156号が村内を縦断し、富山県道54号福光上平線などの県道も地域内の移動を支えていました。ドライバーや観光客の休憩施設として、道の駅「上平」も整備されていました。

隣接していた自治体としては、富山県内では福光町、城端町、平村があり、県外では岐阜県大野郡白川村、石川県金沢市、石川郡吉野谷村（現：白山市）と接していました。

名所・観光

上平村には、多くの人を惹きつける名所や観光スポットがありました。最も著名なのは、ユネスコ世界遺産である菅沼合掌造り集落です。その他にも、境川ダム建設によって生まれた桂湖は、周辺の豊かな自然と共にアウトドアを楽しむ場として利用されていました。冬期にはタカンボースキー場でスキーやスノーボードが楽しめました。歴史的な建築物である岩瀬家住宅や、日帰り温泉施設のくろば温泉も人気でした。地域に伝わる伝統的な祭りとして、お小夜まつりが開催されていました。

著名な出身者

言語学者として知られる真田信治氏が、この上平村の出身です。

現在、上平村は南砺市の一部として、その貴重な自然環境と歴史的な合掌造り集落が大切に保全されています。かつて集団移転した集落の歴史も含め、この地が持つ多様な側面は、今も多くの人々の関心を集めています。

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