上有知藩

上有知藩（こうずちはん）

上有知藩は、美濃国武儀郡上有知（現在の岐阜県美濃市美濃町地区）を居所とした、江戸時代初期まで存在した藩です。関ヶ原の戦いの後、当地を加増された金森長近が居城を移し、城下町を整備しましたが、その後の相続問題により短期間で廃藩となりました。

歴史

佐藤氏の時代

戦国時代には、佐藤清信が当地を拠点とし、鉈尾山に鉈尾山城を、その麓の長良川河畔に居館を構えました。清信の後を継いだ佐藤秀方は、武儀郡の大半、2万5000石を治めました。しかし、秀方の子・方政は、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いで西軍に加担したため、戦後に改易されました。

金森氏の時代

金森長近の入封

天正14年（1586年）に飛騨一国を領有し、高山城主となった金森長近は、佐藤家と姻戚関係にありました。関ヶ原の戦いでは東軍に与し、戦後の恩賞として美濃国武儀郡上有知・関、および河内国金田で2万3000石を加増され、合計6万1000余石を領しました。長近は、新領地である上有知に本拠を移し、小倉山に新たな城（小倉山城）を築きました。

長近の入封当時、下渡地区には長良川の河港があり、その南に町場（古町）がありました。長良川の水害を避けるため、長近は小倉山城から長之瀬川を隔てた台地上に町を移すことを決定し、町割りを実施しました。慶長7年（1602年）頃には河港が小倉山城の麓に移され、整備されました（上有知湊）。新たな城下町には、慶長11年（1606年）に古町からの移住が命じられました。

上有知と飛騨

関ヶ原の戦い以前、金森可重は長近から飛騨古川の増島城を預けられ、1万石を与えられていました。長近が上有知に移る際、高山城は可重に預けられました。

「金森先祖書」には、長近が可重に飛騨国を譲ったと記されています。この時期の金森家の領国について、長近は可重に飛騨一国3万8700石を譲り、自身は上有知藩2万3000石を領有したとされることもあります。

所領分割から廃藩まで

慶長11年（1606年）、長近に実子である二男の長光が誕生しました。慶長13年（1608年）に長近が死去すると、家督は可重が継ぎました。可重は、長近の遺領のうち飛騨国（飛騨高山藩3万8700石）を領有し、美濃・河内両国内の2万3000石は長光に分与しました。長光はさらに河内国内の3000石を家臣に分け与えたため、美濃国内2万石を領有することとなりました。

しかし、慶長16年（1611年）に長光が6歳で夭折したため、上有知藩は廃藩となりました。

後史

長光の家臣であった島四郎兵衛、肥田忠親、池田政長が幕臣として召し出され、上有知藩の旧領でそれぞれ1000石が与えられました。長光の母・久昌院は、終生河内金田に住み、または金田3000石を領有したと伝えられています。

下有知村については、『慶長郷帳』に「金森後室」が1000石を領有していたことが記されています。

歴代藩主

金森家

外様
1. 金森長近
2. 金森長光

領地

上有知

地名の由来とその後

『和名抄』には「有知郷」という記述があり、後にこの地域が分割され、上有知、中有知、下有知といった地名が生まれました。上有知は現在の美濃市の中心部ですが、明治末年に「美濃町」と改称されたため、「上有知」は歴史上の地名となっています。

上有知藩の廃藩後、上有知村は幕府に収公されましたが、後に尾張藩領となりました。金森長近が開いた上有知湊は発展し、水運の要所として栄えました。また、和紙の産地としても知られるようになり、物資集散の拠点として明治時代後期までその役割を果たしました。往時の街並みが残る地区は、美濃市美濃町伝統的建造物群保存地区として指定されています。

清泰寺はもともと佐藤氏が建立した寺で、金森長近も菩提寺として小倉山城内に移しました。天明3年（1783年）には尾張藩の上有知代官所が置かれ、地域の行政中心地となりました。

1889年（明治22年）には町村制施行に伴い上有知町が発足し、1911年（明治44年）に美濃町へと改称しました。この改称は、美濃和紙の産地であることに由来します。また、同年に岐阜市とを結ぶ鉄道路線（美濃電気軌道、後の名鉄美濃町線）が開通しました。

脚注

注釈

出典

参考文献

二木謙一監修、工藤寛正編『藩と城下町の事典』東京堂出版、2004年。
川辺町史編さん委員会 編『川辺町史 通史編』東京堂出版、1988年。https://www.kawabe-gifu.jp/?page_id=12750。

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