鉈尾山城

鉈尾山城の概要

鉈尾山城（なたおやまじょう）は、戦国時代に美濃国武儀郡上有知（現在の岐阜県美濃市）に存在した山城です。別名として上有知城（こうずちじょう）とも呼ばれていました。長良川沿いの重要な川湊であった上有知湊の北方に位置する古城山（標高437メートル）山頂に築かれており、その立地から戦略的な要衝でした。

古城山は、かつて七尾山と呼ばれていましたが、後に鉈尾山と呼ばれるようになりました。また、築城者である美濃佐藤氏にちなんで、藤白山、藤城山とも呼ばれることもありました。

歴史

平安時代、有知郷は上有知郷と下有知郷に分割され、上有知郷は藤原氏の荘園領となり上有知荘と称されました。この地域では、美濃源氏の一族である山県氏が上有知蔵人として代官を務めていました。

鎌倉時代には、承久の乱（1221年）後に常陸国から来た佐竹氏が上有知を支配し、室町時代には美濃国守護職土岐氏の一族である浅野氏が支配しました。

浅野氏は代々地頭職代官を世襲していましたが、応仁の乱（1467年）後、美濃佐藤氏がこの地を支配するようになり、佐藤三河守通信の子である修理大夫宗信が上有知七尾山（古城山）に「藤城」を築いたとされています。

天文9年（1540年）には、斎藤氏に仕えていた佐藤清信が藤城を改築・拡張し、鉈尾山城を築きました。美濃佐藤氏は、北面の武士から歌人となった佐藤義清の同母弟である佐藤仲清の子孫とされています。『上有知旧事記』によると、山頂の城は南北18間、東西20間で、四方を釣壁の塀で囲まれた堅固な要害でした。特に、釣壁の釣縄を鉈で切断し、壁を断崖に落とすことで、敵の侵入を防ぐことができたとされ、七尾山が鉈尾山と呼ばれるようになったのはこのためだという説も伝えられています。

清信の子である佐藤秀方は織田信長に服属し、元亀元年（1570年）には姉川の戦いや比叡山包囲に参加しました。元亀3年（1572年）から元亀4年（1573年）にかけての武田信玄による西上作戦では、岐阜城を攻めるための重要拠点とみなされ、武田信玄からの調略を受けました。

武田信玄朱印状には、郡上への遠藤氏への指示として「岐阜の鉈尾の出城を早急に築くように」との記述があり、浅井長政の書状にも「東美濃の加治田、壺、奈多尾三ヶ所城は、信玄と申し合わせた」との記述が見られます。これらの記述からも、当時の鉈尾山城の重要性が伺えます。

秀方はその後も、天正2年（1574年）の伊勢長島攻め、天正3年（1575年）の長篠の戦い、天正6年（1578年）の月岡野の戦いなどに参加しました。天正10年（1582年）の本能寺の変後には、日根野弘就や金森長近と去就を相談し、徳川家康に味方しました。

その後、羽柴秀吉に鉈尾山城を安堵され、天正11年（1583年）には羽柴秀吉と岐阜城主織田信孝が対立すると、秀吉方の森長可と連合して信孝方に付いた遠藤慶隆を立花山で降伏させました（立花山の戦い）。

文禄2年（1593年）に秀方の跡を継いだ佐藤方政は、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは西軍に属した岐阜城主織田秀信に従いましたが、関ヶ原の戦いの前哨戦とされる米野の戦いで敗れ、本戦には参加しませんでした。戦後、領地を没収され、鉈尾山城主としての佐藤氏は滅亡しました。

佐藤氏の旧領は、飛騨一国の太守であった金森長近への論功行賞として、上有知に関を加えて武儀郡全体が与えられました。慶長10年（1605年）には、80歳を超えた長近が、飛騨一国を後継者に相続させて自身は鉈尾山城に入りましたが、新たに小倉山城を築いて移り、鉈尾山城は廃城となりました。

遺構

鉈尾山城は、平時には物見を置き、有事には拠点として戦ったり籠城したりするための城砦として機能していました。山頂の主郭を中心に、南北に郭が連なっています。主郭南側の郭や郭下には石垣が残り、主郭北側の細長い郭の先端にも石垣の痕跡が残っています。また、その下の郭には土塁も残っています。

城下町は、余取川が長良川に合流する付近一帯の低地にあり、現在は保寧寺跡、古町、古城跡、金屋街道、小者町などの小字名が残っています。古城跡には、城主であった佐藤氏の居館があったと推定されています。

歴代城主

佐藤宗信
佐藤清信
佐藤秀方
佐藤方政

脚注

関連項目

佐藤六左衛門尉
大矢田神社
加治田城
一柳城
* 古城山パーキングエリア

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