上杉憲房 (戦国時代)

上杉憲房（うえすぎ のりふさ）は、戦国時代に生きた武将であり、山内上杉家の13代当主としてその名を歴史に刻んでいます。また、関東管領という重要な職にもありました。

応仁元年（1467年）、彼は上杉憲実の子である周清の子としてこの世に生を受けました。当初は僧侶となるはずでしたが、運命は彼を戦国の舞台へと導きます。彼は、又従兄弟にあたる関東管領・上杉顕定の養子となります。しかし、その立場は決して安泰とは言えませんでした。長尾景春の乱の最末期には、長尾景春らに擁立され、一時的に山内上杉家の当主として担ぎ上げられた時期もあったとされています。また、顕定には実子（庶子）がいたとする説もあり、後継者争いは複雑な様相を呈していました。

永正4年（1507年）に古河公方・足利成氏の次男である顕実が顕定の養子となると、事態はさらに悪化します。顕実は顕定の仮名である「四郎」を名乗ることを許され、これにより憲房は後継者の地位を失い、庶流としての立場が確定してしまいます。しかし、彼はただ没落を待つだけではありませんでした。有力な軍勢を率いて各地を転戦し、その存在感を示し続けました。

顕定と共に越後国守護代・長尾為景を討つため出陣した際、上野国白井城に駐屯していた憲房でしたが、顕定が長森原の戦いで命を落とすと、彼は兵を引いて撤退します。顕定の遺言により、関東管領職は顕実が継承することになりましたが、憲房はこれに異を唱え、顕実と激しく争います。そして、永正9年（1512年）ついに勝利を収め、山内上杉家の家督を奪還し、永正12年（1515年）には顕実の死によって関東管領職をも手中に収めます（永正の乱）。

しかし、彼の道のりは決して平坦ではありませんでした。家臣である長尾景春の離反、扇谷上杉家の上杉朝興や相模国の北条氏綱、甲斐国の武田信虎といった周辺の有力大名との長年にわたる抗争に巻き込まれ、常に不安定な状況に置かれていました。度重なる戦乱と苦労がたたり、病に倒れた憲房は、大永5年（1525年）3月25日、59歳でこの世を去りました。

実子である憲政はまだ幼かったため、先に養子として迎えていた憲寛が跡を継ぎましたが、憲房と顕実の間で争いが起きたように、憲政と憲寛の間でも家督を巡る争いが繰り広げられます。最終的には憲寛を追放した憲政が家督を継承することになりました。

上杉憲房の生涯は、戦国の世の激しさと、その中で生き抜く人々の葛藤を色濃く反映しています。

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