上杉房朝

上杉房朝

生涯

室町時代中期に越後国の守護として活躍した上杉房朝（うえすぎ ふさとも）は、越後上杉家の第5代当主です。応永28年（1421年）に、当時の越後守護であった上杉朝方の子として生を受けました。

房朝の幼少期は波乱に満ちたものでした。生まれた同年の応永28年には祖父である上杉房方が亡くなり、さらに翌応永29年（1422年）10月には父・朝方が後を追うように死去しました。幼い房朝（当時は幸龍丸）に代わり、叔父にあたる上杉頼方が越後守護職を代行することとなります。しかし、頼方は越後の実質的な支配者である守護代の長尾氏と激しく対立し、「応永の大乱」と呼ばれる内乱を引き起こします。この戦いは頼方にとって芳しい結果をもたらしませんでした。

その状況に加えて、応永31年（1424年）12月には、幕府の要職である管領・畠山満家が、房朝を「上杉家の惣領として庇護する」という名目で、頼方の邸宅から房朝を連れ出すという事件が発生します。この出来事を機に、房朝とその家臣たちは、頼方と敵対していた守護代の長尾邦景と連携を深めていくことになります。最終的に応永の大乱は頼方の敗北に終わり、頼方は勢力を失います。これにより、幼かった房朝が正式に越後守護職を継承することとなったのです。

しかし、守護に就任したものの、越後の実権は引き続き守護代の長尾邦景が握り続けました。邦景は守護である房朝の権威を事実上無視し、室町幕府との独自のパイプを保持していました。幕府側も、有力な守護代である邦景に対して、越後国内の政治運営を委任することを黙認していたため、房朝は名目上の守護に過ぎない時期が続きました。

この状況が変化したのは、永享の乱による鎌倉府の滅亡と、永享12年（1440年）に6代将軍・足利義教が嘉吉の変で暗殺された後のことでした。畿内や関東の政治情勢が大きく変動したことで、長尾邦景によって独断で行われていた越後支配に、守護である房朝自身が深く関与する機会が生まれます。叔父で関東管領であった上杉憲実も、自らの次男である龍春（後の上杉憲忠）の庇護を房朝に依頼するなど、房朝の立場は徐々に強化されていきました。文安3年（1446年）には、房朝自身が越後へ赴き、佐橋刑部少輔を討伐するなど、積極的な姿勢を見せ始め、守護としての権威を示すまでになります。

順調に越後支配の実権を回復しつつあった房朝でしたが、宝徳元年（1449年）2月27日、滞在していた京都の邸宅において、わずか29歳で突然の死を遂げました。その後、越後上杉家の家督は、房朝の従弟にあたる上杉房定が継承しました。

なお、文安4年（1447年）には、永享の乱後に鎌倉に軟禁されていた万寿王丸（後の古河公方足利成氏）の関東への帰還が実現しています。この帰還は一般的には後任の越後守護である上杉房定の幕府への働きかけによるものとされていますが、万寿王丸の帰還当時はまだ房定は越後守護に就任しておらず、その役割を果たしたのは房朝であるとする見方もあります。短い生涯ながら、動乱期の越後国において守護としての地位を確立しようと尽力した人物と言えるでしょう。

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