上杉房方

上杉 房方

上杉房方（うえすぎ ふさまさ／ふさかた）は、南北朝時代から室町時代前期にかけて活躍した武将であり、越後国守護、そして越後上杉家の第2代当主を務めた人物である。

正平22年／貞治8年（1367年）、山内上杉家の上杉憲方の子に生まれる。天授4年／永和4年（1378年）、叔父にあたる先代の越後守護上杉憲栄が隠居した後、越後の守護代であった長尾高景の強い推挙もあり、天授6年／康暦2年（1380年）に越後守護の座に就いた。

当時の越後国内の公領（国衙領）は、房方の実父である山内上杉家の上杉憲方と、犬懸上杉家の上杉朝房によって分割されていた。房方はまず実父憲方からその半分を譲られた。さらに、犬懸上杉家の上杉朝房の養子となることを条件として、残る半分の所領も継ぐことになった。越後上杉家を継いだとはいえ、房方は一族内では山内上杉家の一員と見なされており、実父憲方からは、山内上杉家の後継者と定められた弟憲定に万一嫡子が無かった場合には、房方が山内上杉家と関東管領職を継承するよう命じられていた。

守護となった当初は、実父憲方の補佐を受けながら政務を執り、その没後は長尾高景の嫡男である守護代長尾邦景の支援を得た。守護就任直後は南朝方の残存勢力による抵抗もあったものの、おおむね越後国内は平穏を保った。京都に滞在し幕府に出仕していた房方は、応永7年（1400年）には幕府の要職である評定衆に任じられるなど、中央においてもその存在感を示した。

応永23年（1416年）に勃発した関東での上杉禅秀の乱では、幕府の命を受け、一軍を率いて4代鎌倉公方足利持氏と甥の関東管領上杉憲基を支援するために関東へ下向し、上杉禅秀の討伐に貢献する活躍を見せた。しかし、応永25年（1418年）に甥の憲基が急死すると、山内上杉家における憲定の子孫が途絶えてしまう。この事態に対し、房方は山内上杉家の有力な家臣らと協議の上、自らではなく三男の憲実を山内上杉家の後継者に据えることを決断した。

越後国内における自家の影響力強化にも努めた。阿賀野川以北に位置する山浦の地に実弟の憲重を派遣し、下越地方の掌握を図らせた。憲重が没した後は次男の頼方をその後継とし、ここから山浦上杉家が興る礎を築いた。また、中越地方の上条には末子の清方を派遣し、上条上杉家の祖とした。このように子弟を国内の要地に配することで、越後における上杉家の支配体制を確立しようとした。

幕府においては、評定衆として管領斯波義将に次ぐ重きをなしていたが、応永13年（1406年）には評定衆の職を辞し、同年11月には出家して「常越」と号した。晩年は出家して穏やかな生活を送ったと見られる。応永28年（1421年）11月10日に死去した。跡は嫡男の朝方が継いだが、朝方もほどなく死去している。

一方で、房方の治世を通じて、守護代の地位にあった長尾邦景が越後国内における実権を次第に掌握し、幕府首脳部もその存在を無視できなくなるほどに台頭していったことも特筆される。房方の時代は、越後上杉家が国内支配の基礎を固め、中央でも一定の地位を保った一方で、後の時代に守護家と守護代家との関係が逆転していく端緒となった時期でもあったと言えるだろう。

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