上杉景信

上杉 景信

上杉 景信（うえすぎ かげのぶ）は、日本の戦国時代に越後国で活動した武将です。越後の守護代を務めた長尾氏の一族である栖吉長尾家の系統に連なりますが、越後守護であった上杉氏の傍流にあたる上条上杉家の家督を継承したと伝えられています。彼の呼称とされる「越の十郎」については、かつて景信自身を指すと考えられていましたが、近年の研究では、景信の子である信虎を指す可能性が高いとする見方が有力となっています。

彼の出自に関しては、複数の伝承があります。例えば、「上田長尾系図」によれば、越後の戦国大名として知られる上杉謙信の生母、青岩院の父にあたる長尾顕吉の孫であるとされます。顕吉の妻は上条上杉氏の出身であり、彼女が景信の血縁上の祖母にあたるため、景信が後に上条上杉家の名跡を継いだ背景には、この上杉氏との血縁関係があったと考えられています。また、顕吉が「上条入道」と称されたという説も、上条上杉家との関係性を示す傍証とされています。景信の父は、顕吉の子である長尾右京亮景明とされています。楞厳寺に伝わる「越後長尾氏之次第」によれば、父・景明の母が上記の上条氏であるため、景信は父方を通じて上杉氏の血を引いていることになります。一方で、山本寺景定の弟とされる山本寺秀景を景信の父とする異説も存在します。しかし、山本寺景定も長尾氏の出身であったとされており、いずれの説をとるにしても、景信が越後長尾氏の一族であったことには変わりがないようです。

景信が上条上杉家を継承した正確な時期は明らかではありませんが、彼の名に関する史料上の記述がいくつか見られます。享禄4年（1531年）1月に越後の国人衆が交わした「越後衆連判軍陣壁書」には、「十郎」という署名が確認できます。上条上杉家の初代当主である上杉清方が名乗った通称が「十郎」であることから、もしこの署名が景信のものであれば、この頃までに彼が上条上杉家を継いでいた可能性を示唆します。ただし、この「十郎」は別の上杉氏の一族である十郎定明を指すという説も存在します。また、永禄2年（1559年）10月、都から越後に帰還した上杉政虎（後の謙信）を祝うため、太刀を献上した人物の中に「越の十郎殿」という名が見られます。この「越の十郎殿」も、景信を指している可能性が指摘されています。なお、「上杉家御年譜」によると、景信自身は長尾姓を名乗り続け、上杉姓を正式に称するようになったのは子の信虎からであるという記述も見られます。

景信から子の信虎への家督継承の時期も明確ではありませんが、早ければ天正元年（1573年）頃には行われたと考えられています。家督を継いだ信虎は、上杉謙信、そしてその養子である上杉景虎に仕えましたが、謙信の死後に起こった上杉家の内乱である御館の乱において戦死してしまいます。これにより、上杉十郎家（上条上杉家）の家名は断絶することとなりました。信虎の戦死後、その名跡は景信の娘婿にあたる本庄繁長に与えられました。

参考文献：
今福匡『上杉景虎 謙信後継を狙った反主流派の盟主』（宮帯出版社、2011年）

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