上江隼人

上江 隼人

日本のオペラ界で活躍するバリトン歌手、上江隼人（かみえ はやと）は、1979年8月13日に千葉県市川市に生まれました。その音楽的な素養は、同じくバリトンオペラ歌手であった父、上江法明氏（2015年没）の影響を大きく受けて育まれました。正則学園高等学校を経て、日本を代表する音楽教育機関である東京芸術大学音楽学部声楽科を卒業し、プロフェッショナルとしてのキャリアをスタートさせました。

国際的な舞台での活躍

上江隼人は、その才能を国内外で発揮しています。特にイタリアのオペラ界において目覚ましい活動を展開してきました。2011年には、ジュゼッペ・ヴェルディゆかりの地として知られるブッセートで開催されたヴェルディフェスティバルにおいて、パルマ王立歌劇場主催の公演『イル・トロヴァトーレ』で、主要な役であるルーナ伯爵を演じ、成功を収めました。その後もヴェルディ作品への取り組みを深め、2012年4月にはパルマ王立歌劇場で、そして2013年10月にはシチリアのカターニアにあるマッシモ・ベッリーニ劇場で、オペラ『スティッフェリオ』のスタンカー役を務めました。

また、マッシモ・ベッリーニ劇場とは深い関係を築き、2014年5月には同劇場でマスカーニ作曲『カヴァレリア・ルスティカーナ』のアルフィオ役、およびレオンカヴァッロ作曲『道化師』のトニオ役を演じるなど、イタリアの重要なレパートリーで活躍しました。これらの実績により、同劇場の上海ツアーにも参加するなど、活躍の場を広げました。さらに、イスラエルハイファ交響楽団など、国内外の様々なオーケストラとの共演も行っています。2015年には再びブッセートのヴェルディフェスティバルに招かれ、『リゴレット』のタイトルロールという大役を任され、国際的な評価を不動のものとしました。

国内での重要な役割と評価

日本国内においても、上江隼人はオペラ界の中心で活躍しています。東京二期会の公演には、2012年の『ナブッコ』を皮切りに数多く出演しました。特に『道化師』のトニオ役（2012年）、シラー原作の壮大な作品『ドン・カルロ』のロドリーゴ役（2014年）、そしてヴェルディの傑作『リゴレット』のタイトルロール（2015年）は、彼の重要なレパートリーとなりました。2015年の『リゴレット』での演技は高く評価され、『音楽の友』誌や朝日新聞で「道化の絶唱」と評されるなど、その表現力と声楽的な技術が絶賛されました。その後も、『トロヴァトーレ』のルーナ伯爵役（2016年）、プッチーニの短編オペラを集めた『プッチーニの三部作』（2018年）では、『外套』のミケーレ役、『ジャンニ・スキッキ』のスキッキ役とタイトルロールを演じるなど、多様な役柄をこなしました。2019年以降は、日本のオペラ界を牽引する藤原歌劇団の団員として、数多くの公演で主要な役割を担っています。

受賞と録音

長年にわたる国内外での活躍と高い実力は、数々の栄誉として認められています。将来性のある若手オペラ歌手に贈られる五島記念文化賞オペラ新人賞を受賞し、その才能が早くから注目されていました。さらに、2020年度にはバリトンリサイタルの成果が認められ、令和二年文化庁芸術祭新人賞を受賞するなど、日本の文化芸術振興においてもその貢献が評価されています。2021年1月には、満を持して初のCDアルバム『ヴェルディアーノ』を発売し、その円熟した歌声を多くの音楽ファンに届けました。

現在、上江隼人は日本声楽アカデミーの会員、そして藤原歌劇団の団員として、精力的に活動を続けています。国内外の舞台で培った経験と、卓越した表現力をもって、日本のオペラ界に欠かせない存在として活躍しています。

参考：
バリトンオペラ歌手 上江隼人の公式オフィシャルサイト
上江隼人 - 日本声楽家協会
Hayato kamie 上江隼人 (@Hayatocanto) - X（旧Twitter）
上江 隼人 (Hayato Kamie ) (hayato.kamie) - Facebook

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