上河内岳

上河内岳：南アルプスの雄大な峰

上河内岳は、静岡県葵区と長野県飯田市にまたがる標高2,803mの山です。南アルプス国立公園に含まれ、日本二百名山にも選定されている、南アルプスの重要な峰の一つです。赤石山脈南部に位置し、大井川の支流である上河内沢の源流域にその姿を現します。

山容と植生

山頂部は森林限界を超えた岩場となっており、360度のパノラマ展望が楽しめます。富士山や周辺の山々、遠くまで広がる山々の連なりを眺望できます。山頂の南西側には、周氷河地形の名残である窪地状の亀甲状土の地形が確認できます。また、山頂周辺には「御花畑」と呼ばれる高山植物の群生地が広がり、多様な高山植物を観察することができます。北側の南岳との間にも、同様の高山植物の群生地が存在します。ハイマツ帯には雷鳥が生息し、豊かな自然環境を象徴しています。夏は雨が多く、5月には山頂部に積雪が見られることもあります。11月頃からは本格的な冬山シーズンとなります。

登山ルートと歴史

上河内岳への登山ルートは複数存在し、赤石山脈の主稜線上にあるため、縦走ルートの一部として登頂されることが多いです。主な登山ルートは、長野県側と静岡県側の登山口からそれぞれアプローチできます。

長野県側（便ヶ島方面）からのルートは、便ヶ島登山口から聖岳を経由するルートが一般的です。公共交通機関は不便なため、マイカー利用が推奨されます。

静岡県側（畑薙第一ダム方面）からのルートは、畑薙第一ダムから始まるルートです。夏季・秋季限定で運行されるバスを利用できます。マイカー利用の場合は、畑薙第一ダムの手前にゲートがあり、一般車両は通行できません。指定された駐車場を利用する必要があります。ダムから先は、ヤレヤレ峠、ウソッコ沢小屋などを経て主稜線へと至るルートが整備されています。かつては畑薙大吊橋から畑薙山を経由するルートも存在しましたが、現在は廃道となっています。

いずれのルートも、高度感があり、体力と経験が必要な登山となります。特に、積雪期の登山は、熟練した登山者でないと危険です。

歴史的には、1925年（大正14年）7月に長野県上村の遠山尚岳会が、神祠を上河内岳に安置する際に、易老岳から赤石岳への縦走中に初登頂を果たした記録が残っています。

山小屋と水場

上河内岳周辺には、登山者の休憩や宿泊に利用できる山小屋が点在しています。茶臼小屋は、比較的利用しやすい山小屋の一つで、キャンプ指定地も併設されています。南アルプス国立公園内のため、キャンプ指定地以外での野営は禁止されています。茶臼小屋では、富士山を望むことができ、食事提供も行っています。水場は、聖岳小屋、西沢渡、椹島ロッジ、茶臼小屋周辺などにありますが、涸れている場合や積雪で利用できない場合もあります。

アクセス

上河内岳へのアクセスは、長野県側と静岡県側で異なります。長野県側は、JR飯田線飯田駅か平岡駅からタクシー、または路線バスとタクシーの組み合わせとなります。静岡県側は、JR静岡駅から夏季・秋季限定のバス、または大井川鐵道井川線井川駅からバスを利用できます。マイカー利用の場合は、両県ともに高速道路インターチェンジから国道・県道などを利用しますが、通行止めなどに注意が必要です。

周辺環境

上河内岳の周辺には、南岳、上千枚山などの山々が連なり、大井川や天竜川の源流域も近接しています。多様な動植物が生息する豊かな自然環境が広がっています。

参考文献

『日本の山1000』山と溪谷社
『日本三百名山』毎日新聞社
『新版・日本雪山登山ルート集』山と溪谷社
『改訂版　静岡県の山』山と溪谷社
* 『アルペンガイド10 南アルプス』山と溪谷社

上河内岳は、南アルプスの魅力を凝縮した、自然豊かな山です。計画的な登山で、その雄大な自然を満喫しましょう。

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