上野赤井氏

赤井氏について

赤井氏（あかいし）は、日本の中世において上野国邑楽郡佐貫荘（現在の群馬県館林市周辺）に拠点を置いた武士の一族です。彼らの居城である館林城は、戦国時代の重要な拠点の一つとして知られています。

出自の考察

赤井氏の系譜にはいくつかの説があります。清和源氏の一派である河内源氏からの派生や、藤原北家の藤原小黒麻呂との関連、さらには藤原北家秀郷流の佐貫氏一族とのつながりが指摘されることもありますが、これらの説には明確な裏付けが乏しいのが実情です。中でも、宗祇の歌集『老葉』に記された赤井氏の名、特に赤井綱秀が登場することから、文屋康秀の系譜に属しているとも考えられています。

歴史的背景

佐貫荘は、もともと藤原秀郷流の佐貫氏が治めていた土地であり、室町時代以降はその庶流である舞木氏が権力を保持していました。赤井氏の初めての登場は、永享10年（1438年）の永享の乱においてのことで、舞木氏の家臣として赤井若狭守が記録されています。こうした背景から赤井氏は舞木氏の被官としての立ち位置にありました。

しかし、15世紀中葉には、佐貫荘に関する文書から舞木氏の名前が消え、代わりに赤井氏がたびたび登場するようになります。これは、赤井氏がこの地域を掌握するに至ったことを示唆しています。文正元年（1466年）から文明2年（1470年）には赤井綱秀が活動しており、また大永8年（1528年）には高秀と重秀という父子の名前が記録されています。

文明3年（1471年）、享徳の乱の最中に、館林城が上杉氏によって攻撃され、その際の主であった赤井文三（文屋三郎）と赤井文六（文屋六郎）は舞木氏配下としての立場から外れつつありました。文三系は信濃守を、文六系は刑部少輔や若狭守の官職を継承したとみられています。この時期の記録には、赤井氏の重要性が際立っており、彼らが所在した場所における政権の交代が見受けられます。

大永8年に登場する重秀の娘、妙印尼は由良成繁に嫁ぎ、国繁を生むという形で赤井氏の血統は続いています。館林落城の後も赤井氏は館林城を拠点にし、冨岡氏との連携を図っていたことが分かっています。天文16年（1547年）には赤井千代増丸が足利晴氏側に立ちましたが、後北条氏の圧迫がかかると、冨岡氏と共にこれに従いました。

永禄3年（1560年）、長尾景虎が上杉憲政を惹き連れて上野国を攻撃してきた際、赤井氏は後北条氏につき、景虎に従わなかったために、永禄5年（1562年）に館林城は落城してしまいました。この時の城主であった赤井文六は忍へ逃れ以後は消息が不明となり、赤井氏は消滅してしまったと考えられています。

伝説と史実

『館林記』などに語られる伝説によれば、赤井氏は当初、上野青柳城を中心に活動していたとされています。赤井照康（勝光）が弘治2年（1556年）に館林城を築いたという話もあり、その子・文六照景の時代に館林城が落城したと伝えられています。しかし、これらの伝説は近年では史的な信憑性が低いとされ、照康や照景と赤井氏との関連性もはっきりしていません。

赤井氏の物語は、地域の歴史の中で重要な地位を占めており、館林市における文化や歴史の理解に欠かせない存在です。

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