下間頼龍

下間頼龍：戦国乱世を駆け抜けた本願寺の僧侶

下間頼龍（しもつま らいりゅう）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将であり、同時に浄土真宗本願寺の僧侶という二つの顔を持つ人物です。下間真頼の子として生まれ、幼名を松菊、通称を按察使、法名を了明と称しました。

多才な僧侶、政治と文化に通じる

頼龍は、単なる僧侶としてだけでなく、政治や文化にも深い関心と知識を持っていました。特に堺の商人たちとの交流は深く、茶会などを通じて親交を温めたと言われています。これは、当時の僧侶としては珍しく、彼の幅広い知識と社交性を物語っています。

石山合戦での活躍

戦国時代、本願寺は織田信長と対立し、石山合戦が勃発します。この戦いにおいて、頼龍は一族の下間頼資・頼純父子、頼廉らと共に、信長側の武将である細川昭元を攻めるなど、軍事面でも活躍しました。しかし、本願寺内部では信長との和睦を巡り意見が対立します。

本願寺内部の対立と頼龍の立場

本願寺法主顕如と嫡男教如の間で対立が深まると、頼龍は教如の側近として行動を共にしました。顕如が信長と和睦を結んだ後も、教如は再籠城を企てますが、頼龍もそれに従ったため顕如の怒りを買い、一時的に出仕を許されなくなりました。その後も教如の奏者として活動を続け、顕如と教如の和解後も、しばらく表舞台から遠ざけられました。

教如の側近として、東本願寺を支える

顕如の死後、教如が法主となると、頼龍は赦免され、再び奏者の座に復帰しました。しかし、教如が豊臣秀吉によって退隠させられると、頼龍もまた奏者の座を追われ、教如に従います。その後、本願寺が東西に分裂すると、頼龍は東本願寺の法主となった教如に付き従い、東本願寺の坊官として、筆頭家臣として、事務・庶務面で東本願寺を支えました。頼龍は、教如の側近として、常に彼のそばで行動し、その意を汲んで多くの実務をこなしました。

晩年と子孫

頼龍は慶長14年（1609年）に58歳で亡くなりましたが、その子である頼広も教如に従いました。しかし、後に頼広は出奔し、池田輝政に仕え、池田重利と名を改め、大名として活躍しました。また、頼龍の妻である七条は池田輝政の異父姉であり、頼龍と池田家との深い繋がりを示しています。頼龍の血縁は、池田家を通じて、多くの大名や武士に繋がっていきました。

まとめ

下間頼龍は、戦国時代から江戸時代初期にかけて、武将、僧侶、そして政治家として多方面で活躍した人物です。本願寺の内部抗争や織田信長との戦い、そして本願寺の東西分裂など、激動の時代を生き抜き、東本願寺の基礎を築く上で重要な役割を果たしました。その生涯は、単なる一僧侶の枠を超え、時代の変遷を映し出す鏡とも言えるでしょう。

参考文献

柏原祐泉・薗田香融・平松令三監修『真宗人名辞典』法藏館、1999年。
青木忠夫『本願寺教団の展開 戦国期から近世へ』法藏館、2003年。
大桑斉『教如 東本願寺への道』法藏館、2013年。
金龍静・木越祐馨編『顕如 信長も恐れた「本願寺」宗主の実像』宮帯出版社、2016年。
* 神田千里『顕如 仏法再興の志を励まれ候べく候』ミネルヴァ書房（ミネルヴァ日本評伝選）、2020年。

もう一度検索