不妊手術

不妊手術について

不妊手術は、外科的な処置によって妊娠を不可能にする方法であり、避妊手術や断種手術とも呼ばれます。特に家畜に対しては、去勢という言葉が用いられます。不妊手術は、医学的、獣医学的な理由のほか、個人の選択によって行われる場合があります。以下に、それぞれの領域における不妊手術について詳しく解説します。

獣医学領域における不妊手術

獣医学領域では、主に家畜に対して不妊手術が行われます。これらの手術は、動物の繁殖を制限するだけでなく、行動の制御や特定の病気の予防にも役立ちます。

オスの不妊手術

精巣摘出:
観血法: 陰嚢または腹腔側を切開し、精巣を摘出します。この方法は家畜において一般的です。
挫滅: 専用の器具で精索を挟んで押し潰し、血流を遮断して精巣機能を停止させます。この方法は、人間のパイプカットと原理的に近いものです。食肉用の牛などに行われることがあります。
陰嚢除去: 紐やゴムリングで陰嚢上部を締め付け、血行を阻害して睾丸を壊死させ、脱落させます。

メスの不妊手術

卵巣・子宮全摘出: 卵巣と子宮の両方を摘出し、出産能力を完全に失わせる方法です。
卵巣摘出: 卵巣のみを摘出する方法で、手術創が小さく済みます。

医学領域における不妊手術

医学領域では、男性と女性の両方に対して不妊手術が行われます。これらの手術は、避妊を目的とするだけでなく、特定の疾患の治療として行われることもあります。

男性の不妊手術

両側精管結紮切除術（パイプカット）: 精子を運ぶ精管を切断し、端を閉じる手術です。局所麻酔で行われ、精液中に精子が含まれなくなります。パイプカットは避妊効果が高いですが、日本では母体保護法に基づいて行われ、子供が複数いて配偶者の同意がある既婚男性にのみ適用されます。術後には、精管結紮後疼痛症候群が現れることがあります。

女性の不妊手術

卵管結紮術・電気焼灼術:
小開腹手術: 全身麻酔、区域麻酔、または局所麻酔を用いて、腹部を小さく切開し、卵管の一部を切除して結紮する手術です。
腹腔鏡下手術: 麻酔後、腹部に小さな切開を加え、腹腔鏡を用いて卵管を結紮または電気的に焼灼する手術です。
子宮鏡手術: 局所麻酔下で、子宮鏡を膣から挿入し、卵管内を電気的に焼灼して瘢痕組織を形成し、卵管を塞ぐ手術です。切開が不要であり、帝王切開または普通分娩直後に行うことも可能です。この手術は永久的な避妊を希望する成人女性に適しています。ただし、ごく稀に卵管が再結合して妊娠するケースもあります。この手術も母体保護法に基づき、子供が複数いて配偶者の同意がある既婚女性、または妊娠・出産が生命に危険を及ぼす持病を持つ女性に限られます。未婚で不妊手術を受けた場合は、結婚時に配偶者にその旨を告げる義務があります。

子宮摘除術: 避妊効果がありますが、通常は病気の治療目的で行われます。ただし、日本では過去に強制不妊手術として子宮摘除が行われた事例がありました。

日本における法的規制

日本では、母体保護法によって不妊手術が規制されています。不妊手術は、以下のいずれかの条件を満たす場合にのみ行うことができます。

1. 妊娠または出産が母体の生命に危険を及ぼすおそれがある場合
2. 現に複数の子を有しかつ分娩ごとに母体の健康度を著しく低下するおそれがある場合
3. 配偶者が特定の要件を満たす場合

これらの要件は、人工[[妊娠中絶]]の場合よりも厳しく設定されています。
過去には、これらの要件を満たさない不妊手術を行った医師が有罪判決を受けた事例もありましたが、性同一性障害治療としての性別適合手術は、法的に正当なものとされています。


不妊手術は、個人の選択や医学的な理由により行われる重要な医療行為です。それぞれの方法と法的規制を理解し、適切な判断を行うことが重要です。

もう一度検索