世尊寺 (奈良県大淀町)

霊鷲山 世尊寺：聖徳太子ゆかりの古刹

世尊寺は、奈良県吉野郡大淀町比曽に位置する曹洞宗の寺院です。霊鷲山と号し、本尊として阿弥陀如来（放光樟像）を安置しています。ここは聖徳太子霊跡第7番札所としても知られています。

歴史

創建は古く、聖徳太子が建立した48か寺の一つと伝えられています。当初は「比曽寺」と呼ばれ、飛鳥時代には既に存在していたと考えられています。奈良時代には、吉野寺比曽山寺として知られ、本尊の阿弥陀如来座像と木造十一面観世音菩薩立像が光を放っていたという伝承から、現光寺とも呼ばれました。

阿弥陀如来座像と十一面観音菩薩立像

日本書紀には、欽明天皇の時代に河内国から「海から雅楽の音が聞こえ、光り輝いている」という報告があり、溝辺直が海中から樟木を見つけ出し、仏像二体を造らせたという記述があります。これが世尊寺の本尊である阿弥陀如来座像であると伝えられています。

また、推古天皇の時代には、土佐国の南海で光を放つ「沈水香」という木が淡路島に漂着し、聖徳太子がこの木で観音像を作らせ、比曽寺に祀ったとされています。この像もまた、光を放ったと伝えられています。

中世から近世にかけて

世尊寺は、清和天皇や藤原道長など、多くの貴人が吉野参詣の際に訪れ、隆盛を極めました。鎌倉時代には春豪聖人によって再興され、真言律宗となりました。南北朝時代には後醍醐天皇が行幸し、「栗天奉寺」と命名され、勅願寺となっています。

安土桃山時代には西塔が焼失しましたが、東塔は残っていました。しかし、豊臣秀吉によって伏見城に移築され、その後徳川家康によって園城寺（三井寺）に移されました。この三重塔は、現在も重要文化財として残っています。

江戸時代には、塔頭・法輪寺の力添えで浄土宗に改宗し復興が図られました。しかし、法輪寺が焼失し、再興は中断されました。その後、曹洞宗に改宗し、雲門即道によって伽藍を整備・縮小して再興され、現在に至ります。

境内

現在の本堂は、かつての講堂跡に建てられています。本尊の阿弥陀如来坐像の周りには、講堂の礎石が残っています。境内には、聖徳太子お手植えと伝わる壇上桜、十三重石塔、納骨堂、太子堂などがあります。また、金堂跡や東西の塔跡には、礎石が残っています。山門には、左甚五郎作とされる猿の彫刻があります。

文化財

比曽寺跡は国指定史跡に指定されています。また、太子堂や木造十一面観音立像、現光寺縁起絵巻などが、県や町の文化財に指定されています。

アクセス

近鉄吉野線六田駅から奈良交通バスで「比曽口」下車、徒歩15分。または、よどりバスで「北野台5丁目」下車、徒歩5分です。

世尊寺は、歴史と文化が息づく静かな古刹です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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