世界に捧ぐ

クイーン『世界に捧ぐ』

『世界に捧ぐ』（News of the World）は、イギリスのロックバンド、クイーンが1977年に発表した6枚目のアルバムです。パンク・ロック全盛期に、その潮流とは一線を画す、シンプルで力強いサウンドが特徴的な作品です。このアルバムは、バンドの音楽性の幅を広げつつ、各メンバーの個性を際立たせる実験的な試みも含まれています。前作『華麗なるレース』で一つの頂点を迎えたクイーンが、新たな方向性を模索し始めた転換点とも言えるでしょう。

制作背景

前作からわずか2ヶ月という短期間で制作された本作は、サーム・ウェスト・スタジオとウェセックス・スタジオの2箇所でレコーディングされました。この時期、ウェセックス・スタジオではセックス・ピストルズがアルバムを制作しており、両者の間には緊張感があったというエピソードも残っています。

また、本作から、これまでのアルバムで明示されていた「No Synths」のクレジットがなくなっています。これは、おそらく「ゲット・ダウン・メイク・ラヴ」で使用されたハーモナイザーが原因だと考えられています。

サウンドの特徴

本作のサウンドは、これまでの作品に比べて、よりシンプルでダイレクトな印象を与えます。各楽器の音色がクリアに分離しており、バンドの演奏技術の高さが際立っています。また、一部楽曲ではソロワークに近い録音方法が用いられ、各メンバーの個性がより強調されています。これらの要素が組み合わさり、アルバム全体として閉鎖性が減り、当時の音楽シーンとの関連性が感じられる作品に仕上がっています。

アートワーク

アルバムジャケットには、SF画家フランク・ケリー・フリースが描いたイラストが使用されています。このイラストは、元々SF小説のために描かれたものでしたが、ロジャー・テイラーが気に入り、ジャケットに使用することを提案しました。ジャケット用に描き直されたイラストは、ロボットに掴まれたメンバーが描かれており、独特の世界観を演出しています。

40周年記念スーパー・デラックス・エディション

2017年には、アルバム発売40周年を記念したスーパー・デラックス・エディションが発売されました。このエディションには、リマスター音源や未発表音源、ライブ音源など、貴重な音源が多数収録されています。また、DVDには、1977年のツアーのバックステージ映像を収めたドキュメンタリーが収録され、ファンにとっては見逃せない内容となっています。

収録曲

アルバムには、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」や「伝説のチャンピオン」など、スポーツ中継などでよく使用される有名な楽曲が収録されています。その他にも、各メンバーが作曲したバラエティ豊かな楽曲が収録されており、アルバム全体として飽きさせない構成となっています。

代表的な楽曲解説

ウィ・ウィル・ロック・ユー (We Will Rock You)：シンプルなリズムと力強いコーラスが特徴的な、クイーンの代表曲の一つです。ライブでも定番の楽曲として、世界中のファンに愛されています。
伝説のチャンピオン (We Are The Champions)：壮大なスケール感と感動的なメロディーが魅力的な、クイーンの代表的なバラードです。スポーツの試合などでよく使用され、勝利を祝うアンセムとしても知られています。
シアー・ハート・アタック (Sheer Heart Attack)：パンク・ロックの影響を感じさせる、スピーディーでアグレッシブな楽曲です。ロジャー・テイラーがギターも担当しています。
オール・デッド (All Dead, All Dead)：ブライアン・メイがリードボーカルを務める、ドラマチックなバラードです。
永遠の翼 (Spread Your Wings)：美しいメロディーと力強いボーカルが印象的な、クイーンらしいバラードです。
秘めたる炎 (Fight From The Inside)：ロジャー・テイラーが作詞作曲し、ほぼ全ての楽器を演奏した、パワフルなロックナンバーです。
ゲット・ダウン・メイク・ラヴ (Get Down, Make Love)：独特のサウンドとセクシーな歌詞が特徴的な、フレディ・マーキュリー作の楽曲です。
うつろな人生 (Sleeping On The Sidewalk)：ブライアン・メイ作のブルースナンバーです。バッキングトラックは１テイクで録音されたそうです。
恋のゆくえ (Who Needs You)：ジョン・ディーコン作の、スパニッシュギターの音色が美しい楽曲です。
イッツ・レイト (It's Late)：ドラマチックな展開が魅力的な、ハードロックナンバーです。
* マイ・メランコリー・ブルース (My Melancholy Blues)：ジャズ調のアレンジが特徴的な、フレディ・マーキュリー作のバラードです。

まとめ

『世界に捧ぐ』は、クイーンの音楽性の多様性と、各メンバーの個性が際立った名盤です。パンク・ロック全盛期という時代背景の中で、独自の音楽性を追求し、新たなファンを獲得しました。40周年記念盤の発売など、今なお多くのファンに愛され続けている作品です。

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