シアー・ハート・アタック

クイーンの3枚目のアルバム『シアー・ハート・アタック』は、バンドが世界的な成功を収める上で重要な転換点となった作品です。このアルバムは、本国イギリスと日本に続き、アメリカ市場への進出を果たすきっかけとなりました。それまで、クイーンの音楽はアメリカではあまり受け入れられていませんでしたが、このアルバムを機に、彼らの音楽が広く認知されるようになりました。

本作の大きな特徴の一つは、ジョン・ディーコンが作曲した楽曲が初めて収録されたことです。これは、バンドの音楽性の幅を広げる上で重要な要素となりました。

レコーディングは、1974年7月から9月にかけて行われました。初期の2作とは異なり、本作ではトライデント・スタジオに加えて、AIR、ロックフィールド・スタジオ、ウェセックス・サウンド・スタジオの4つのスタジオが使用されました。レコーディング直前には、モット・ザ・フープルの前座として北米ツアーに参加していましたが、ブライアン・メイが予防接種の際に不十分な消毒の注射針を使用したため肝炎を患い、ツアーは中止、メイは入院せざるを得なくなりました。メイの復帰後、レコーディングは再開されましたが、今度はメイが十二指腸潰瘍を患ってしまいます。そのため、メイの回復を待ちながら、ギターソロのパートを空けてレコーディングを進め、復帰後にギターとボーカルのパートを追加して完成させました。このように、本作の制作は困難を極めましたが、その困難を乗り越えたからこそ、バンドの結束がより強固になったとも言えるでしょう。

アルバムタイトルである「シアー・ハート・アタック」は、直訳すると「突発的な心臓発作」という意味ですが、隠語として「暗殺者のナイフ」や「心臓を一突き」という意味も持っています。デジタル・リマスター版CDの日本語解説では、この隠された意味が採用されています。また、同名の楽曲は、本作には収録されておらず、3年後にリリースされたアルバム『世界に捧ぐ』に収録されました。

アルバムの収録曲は以下の通りです。

1. ブライトン・ロック
2. キラー・クイーン
3. テニメント・ファンスター
4. フリック・オブ・ザ・リスト
5. 谷間のゆり
6. ストーン・コールド・クレイジー
7. ディア・フレンド
8. ミスファイアー
9. マイ・フェアリー・キング
10. ナウ・アイム・ヒア
11. イン・ザ・ラップ・オブ・ザ・ゴッズ
12. ストーン・コールド・クレイジー（ライブ）

リード・ボーカルは、特記がない限りフレディ・マーキュリーが担当しています。

パーソネルは以下の通りです。

フレディ・マーキュリー – リードヴォーカル、コーラス、ピアノ、ハモンドオルガン、タック・ピアノ
ブライアン・メイ – ギター、コーラス、ピアノ、バンジョーウクレレ、リードヴォーカル
ロジャー・テイラー – ドラムス、パーカッション、コーラス、リードヴォーカル
ジョン・ディーコン – ベース、アコースティックギター、エレクトリックギター、コントラバス

アルバムは、各国のチャートで高い順位を記録しました。全英では2位、全米では12位、日本では23位を記録しました。

『シアー・ハート・アタック』は、クイーンの音楽性を確立し、その後の活躍を決定づけた重要なアルバムと言えるでしょう。

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