世界ウイグル会議

世界ウイグル会議（WUC）

世界ウイグル会議（World Uyghur Congress、WUC）は、世界中に存在するウイグル人の組織を統括する国際的なネットワーク団体です。ドイツのミュンヘンに本部を置いています。

この組織は、東トルキスタンおよび海外に暮らすウイグル人の権利と利益を代表する唯一の国際機関であることを目指しています。その活動方針として、平和的かつ非暴力的な手段、そして民主的なプロセスを通じて、ウイグル民族の政治的な地位を確立することを掲げています。これは、民族自決権の実現、つまり独立した政治的前途を獲得することを意味し、独立か高度な自治の獲得かについては、両方の可能性を残した表現となっています。特に、第2代議長のラビア・カーディル氏は、ダライ・ラマ14世との会談を通じて、非暴力を通じた高度な自治権獲得の方向で一致したとされています。

一方で、中国政府は世界ウイグル会議に対し厳しい姿勢を取っており、「テロ組織と関わり、中国の分裂を企てている」と非難しています。しかし、世界ウイグル会議は20以上の組織が加盟しており、国外のウイグル人運動において最大規模の団体となっています。

沿革

ウイグル人の民族運動は、かつてカリスマ的なリーダーシップや組織間の統一行動に欠けるという課題が指摘されていました。これを受け、1990年代には、各国で個別に活動していた運動組織を統合しようとする動きが活発化しました。

1992年には、トルコの退役軍人リザ・ベキン氏らが中心となり、イスタンブールで「東トルキスタン民族会議」が開催され、世界各国の民族運動関係者や個人が集まりました。また、1996年には学生運動家のドルクン・エイサ氏らによって、ドイツ・ミュンヘンに「世界ウイグル青年会議」が設立されました。

2004年4月16日、これら二つの主要組織、「東トルキスタン民族会議」と「世界ウイグル青年会議」が統合され、新たに「世界ウイグル会議」として再編されました。初代議長には、ラジオ・フリー・ヨーロッパの元職員であるエルキン・アルプテキン氏が就任しました。その後、2006年11月には、ノーベル平和賞候補にも挙げられたラビア・カーディル氏が第2代議長に選ばれました。

2017年11月にドイツで開催された第6回代表大会では、ドルクン・エイサ氏が新総裁に就任し、ウメル・カナット氏が執行委員長となりました。この際、前総裁のラビア・カーディル氏は世界ウイグル会議特別指導者として、新執行部とは異なる独自の活動を展開する意向を示し、各地域に特別代表を任命しました。日本からは日本ウイグル連盟のトゥール・ムハメット氏が指名されています。

活動

世界ウイグル会議の活動は多岐にわたりますが、その中心は世界各国のウイグル人組織間の連携強化と交流促進、そして中国におけるウイグル人の人権状況について国際社会への情報発信を行うことにあります。具体的には、アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチなどの国際的な人権団体と協力し、中国の人権侵害に対する啓発活動を行っています。また、「代表なき国家民族機構（UNPO）」に東トルキスタンの代表組織として参加するなど、国際的な場での訴えかけも積極的に行っています。

さらに、中国の民主化推進や少数民族の権利保護を求める観点から、漢人民主化運動の活動家やチベット亡命政府との交流も行っています。国外に暮らすウイグル人コミュニティ向けの活動としては、ウイグル語やウイグル文化教育の支援、そして中国からの亡命者への生活支援なども活動の一環として行っています。

米国政府系のラジオ・フリー・アジア（RFA）や全米民主主義基金（NED）からの支援を受けており、米国政府との関係も比較的強いとされています。

こうした世界ウイグル会議の活動に対し、中国政府は強い懸念を示しています。2003年12月には、前身である世界ウイグル青年会議と当時の代表ドルクン・エイサ氏をテロリストと見なす公式文書を発表しました。また、ラビア・カーディル氏がノーベル平和賞候補となった際にも批判を行うなど、警戒を強めています。

特に、中国国内のウイグル人強制収容所の問題については、ドルクン・エイサ代表が2018年のフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、収容されているウイグル人の数が100万人以上、あるいは200万人以上に達している可能性があるとの見解を示しており、国際社会の懸念を集めています。

各国との関係

日本との関係

日本では、世界ウイグル会議と関連する複数の組織が存在します。

日本ウイグル協会：2008年に在日ウイグル人と日本人支援者によって設立されました。当初は世界ウイグル会議の傘下団体として活動していましたが、一時期参加資格を喪失しました。しかし、2017年の代表大会で、日本ウイグル協会会長のイリハム・マハムティ氏が世界ウイグル会議の東アジア太平洋地域全権代表に就任し、再び傘下団体として復帰しました。
日本ウイグル連盟：2015年10月に設立が決定された組織です。世界ウイグル会議は、同日から在日ウイグル人を代表する団体として日本ウイグル連盟を位置づけると決定しました。前述の通り、連盟のトゥール・ムハメット氏はラビア・カーディル特別指導者の特別代表を務めています。
* 日本ウイグル国会議員連盟：2012年4月に自民党本部で設立された超党派の議員連盟です。当時の安倍晋三氏や三原じゅん子氏など複数の国会議員が参加しました。

また、2012年5月には、世界ウイグル会議の第4回代表大会がアジアで初めて東京の憲政記念館で開催されました。この大会には日本の国会議員や各国の関係者が出席し、ラビア・カーディル議長は中国政府の政策を批判し、日本に支援を求めました。大会期間中、ラビア・カーディル代表は日本の戦没者に敬意を表するためとして靖国神社を訪問しました。

中国との関係

中国政府は世界ウイグル会議との直接的な対話を拒否しています。日本政府がラビア・カーディル議長ら要人にビザを発給したことについても、「内政問題への干渉だ」として強く反発しました。

2012年5月に東京で世界ウイグル会議の代表大会が開催された際には、中国外務省報道局長が会議を「テロ組織と関連があり、中国分裂を狙う組織」と非難し、日本政府が開催を許可したことに対して深い不満を示すとともに、ウイグル問題を「中国の内政問題であり、外部からのいかなる干渉も許さない」と主張しました。また、会議メンバーによる靖国神社参拝についても、「中国の分裂分子と日本の右翼勢力が連携し、日中関係の政治的な根幹を損なう行為だ」と厳しく批判しました。この大会の翌日に予定されていた日中経済界の会合が、中国側の事情により急遽中止となった背景には、この会議開催への不満があったと報じられています。

傘下組織

世界ウイグル会議には、世界各国のウイグル人組織が傘下として加盟しています。公式サイトにはアメリカ、カナダ、スウェーデン、ノルウェー、日本などの組織名が掲載されています。

もう一度検索