世界ラリークロス選手権

FIA世界ラリークロス選手権：進化と挑戦の歴史

FIA世界ラリークロス選手権（WRX）は、国際自動車連盟（FIA）が主催する、世界最高峰のラリークロス競技です。北米でのラリークロスの成功を受け、2014年にヨーロッパ選手権から昇格。欧州を中心に年間12～13戦が開催され、世界中からトップドライバーが集結します。ヨーロッパの一部地域では、世界ラリー選手権（WRC）を上回る人気を誇ると言われています。

黎明期からEV化へ：激動のWRX

WRXは、1973年から開催されていたFIAヨーロッパ・ラリークロス選手権(Euro RX)を母体としています。2014年の世界選手権昇格後、人気は急上昇。北米でもアメリカズ・ラリークロス選手権(ARX)が開催されるなど、世界的な盛り上がりを見せていました。しかし、メーカーからの撤退やプロモーションの失敗などもあり、2018年末にはプジョー、アウディ、フォルクスワーゲンといった主要メーカーがWRXから撤退する事態に陥りました。

この危機を乗り越えるため、WRXは大胆な決断をします。それは、競技車両の完全な電動化です。2021年より下位クラスであるRX2がEV化され、2022年には最高峰クラスも「RX1eクラス」としてEVへと移行。瞬時に最大トルク880Nmを発生するパワフルなマシンは、0-100km/hを1.8秒でこなす驚異的な加速力を誇ります。しかし、2023年にはRX1eマシンによる火災事故が発生。その原因究明に時間を要し、開催が中断されるという事態に見舞われました。その後、RX2eのワンメイクマシンを用いてレースが再開されましたが、内燃機関車の復活も検討されている状況です。

クラス分けと車両規定：多様なマシンが競演

WRXは、最高峰のRX1eクラスを中心に展開されています。かつてはスーパーカークラスと呼ばれていましたが、EV化に伴い名称が変更されました。他にも、かつてはスーパーカー・ライツと呼ばれていた下位クラスは、RX2インターナショナルシリーズとして独立。2021年よりRX2eというEVクラスに移行しています。併催される欧州選手権では、スーパーカーERX、スーパー1600、ツーリングカーの3クラスがあり、それぞれ独自の車両規定が適用されています。

車両規定は、時代とともに変化を遂げてきました。2021年までは、主に内燃機関車（ガソリンエンジン車）が使用され、RX2を除く全クラスでグループAまたはグループNのホモロゲーション取得車両がベース車両として使用されました。最高峰クラスのマシンは、四輪駆動で2058ccまでのエンジンを搭載。最大出力は約600bhp、0-100km/hは1.9秒という驚異的な性能を有していました。2022年以降はRX1eクラスでは、クライゼル・エレクトリックが供給する電動化キットを用いたEVマシンが使用され、FIAの基準を満たす4座席の量産市販車も参戦可能となりました。2024年からは、持続可能な燃料を使用するエンジン車の参戦も認められる見込みです。

競技進行とポイントシステム：スリリングなレース展開

WRXのレースは、予選4ヒート、準決勝2ヒート、決勝1ヒートという流れで行われます。各ヒートでは、必ずジョーカーラップと呼ばれるショートカット区間を通過する必要があり、この戦略的な選択がレースの勝敗を大きく左右します。スポッターによる的確な指示も勝敗に影響を与える重要な要素です。ポイントシステムは世界選手権と欧州選手権で共通で、優勝以外のドライバーが最も多くのポイントを獲得することも珍しくありません。チーム選手権では、1チームにつき2台のマシンがフルエントリーすることが義務付けられています。

日本メーカーの参戦状況：今後の展望

アジア圏のメーカーでは、現代自動車や起亜自動車がプライベーターを通じて最高峰クラスに参戦しています。日本メーカーは、スバル、三菱、ホンダといったメーカーがスポット参戦した実績がありますが、2020年現在、フル参戦しているメーカーはありません。今後、持続可能な燃料車への対応を含め、日本メーカーの参戦が期待されます。

まとめ：進化を続けるラリークロスの未来

WRXは、EV化という大きな転換期を経て、新たなステージへと突入しました。技術革新、環境への配慮、そして新たなレギュレーションの導入など、様々な課題に直面しながらも、その人気と魅力は衰えることを知りません。今後も、WRXの動向から目が離せません。

もう一度検索