両江総督

両江総督について

両江総督は、清朝時代に設置された地方長官の役職であり、現代の行政区画でいうところの江蘇省、安徽省、江西省の三省を統括する役割を担っていました。その職務は、管轄地域の軍事と行政の両方を司る重要なものでした。

職務と重要性

両江総督は、地方長官の中で最高位に位置づけられる総督の中でも、特に重要なポストでした。管轄下に南京という重要な都市を抱えていたため、政治的にも経済的にも大きな影響力を持っていました。しかしその一方で、太平天国の乱という大規模な反乱への対応を迫られるなど、非常に難しい職務でもありました。

「両江」という名称は、江蘇省と安徽省が清の初期には「江南省」と呼ばれていたことに由来します。つまり、「江南省と江西省を統括する総督」という意味合いで「両江総督」と呼ばれるようになりました。1866年以降は、華中地方の外国貿易港の監督も両江総督の管轄となり、南洋通商大臣を兼任することになりました。これにより、外交面での重要性も増しました。

歴史

両江総督の歴史は、1647年（順治4年）に設置された江南江西河南三省総督に遡ります。当初、総督府は江寧（現在の南京市）に置かれていました。その後、1652年（順治9年）に一時的に江西総督と名称が変わり総督府も南昌に移転しましたが、すぐに元の名称に戻されました。1661年（順治18年）には江南総督と江西総督に分離されましたが、1665年（康熙4年）に両江総督として再び統合されました。その後、1674年（康熙13年）に再び分離されたものの、1682年（康熙21年）に正式に両江総督として統合され、以降清朝が滅亡するまでその体制が維持されました。

1723年（雍正元年）には、両江総督が兵部尚書兼都察院右都御史を兼任するようになり、より一層の権限を持つようになりました。1831年（道光11年）には、専売品であった食塩の管理が両淮地区で両江総督の管轄となり、経済面での影響力も増しました。

1866年（同治5年）には、南京条約によって開港した五つの港（広州、福州、アモイ、寧波、上海）における貿易監督業務、つまり南洋通商大臣の職務も両江総督が兼任することになりました。さらに、1875年（光緒元年）には、洋務運動の一環として、両江総督の配下に「南洋艦隊」が組織されました。これは、清朝の海軍力増強を目的としたものでした。

1909年（宣統元年）には、南洋艦隊の主要な艦艇が北洋艦隊に統合され、残りの艦艇で「長江艦隊」が組織されました。

総督府

総督府は、江寧城（現在の南京市）の中央部にある漢府街に置かれていました。この場所は、かつて明代に陳友諒の後胤が封じられた漢王府の跡地でした。

1853年から1864年にかけての太平天国の乱の際には、太平天国軍によって南京が占拠され、首領の洪秀全がこの場所に豪華な天王府を建設しました。しかし、1864年に太平天国が崩壊すると天王府は破壊され、その後に曽国藩によって元の総督府が再建されました。

1909年には、南京城内を通る寧垣鉄道の駅が総督府の近くに建設されました。辛亥革命後、1912年にはこの場所が「中華民国臨時大総統府」となり、1927年から1949年までは国民政府と中華民国総統府が置かれました。現在、この場所は「南京中国近代史遺址博物館」として一般に公開されています。

このように、両江総督は清朝の歴史において重要な役割を担い、その影響は現代にも残っています。

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