中世レバノンの歴史

中世レバノンの歴史

中世レバノンの歴史は、アラブによる統治の影響を受けて大きく変容しました。ここでは、レバノンと呼ばれる地域がアラブの支配下に入った過程と、その後のさまざまな王朝による統治について説明します。

アラブ人の征服 (634-636)

ムハンマドの死後、その後継者たちは軍を率いてアラビア半島を超え、東地中海地域へと進出しました。この動きには経済的な要因だけでなく、宗教的な情熱も含まれており、特にジハードの信念が強く影響しています。初代正統カリフ・アブー・バクルの指導の下、イスラームはレバノンに根付くことになります。660年、カリフ・ウマルの時代には、東ローマ帝国軍とのヤルムークの戦いで勝利し、勢力を拡大しました。この勝利によって、レバノンはアラブ帝国の一部となりました。

ウマイヤ朝時代 (660-750)

ウマイヤ朝の創始者ムアーウィヤはシリアの統治者に任命され、この地域には現在のレバノンも含まれていました。彼はレバノン海岸に軍を駐屯させ、また海軍の建設を進めました。さらに、マラダ（後のマロン教徒）からの脅威を排除すべく、対策を講じました。この時期にはアラブ人がレバノンに定住し、地域の文化に影響を与えることになります。

アッバース朝時代 (750-10世紀後半)

750年にはアッバース朝が誕生し、ウマイヤ朝から政権を引き継ぎました。この王朝は厳しい統治を行い、759年には反乱が勃発しました。その後、10世紀末にはティルスのアミールが独立を宣言しますが、次第にファーティマ朝が勢力を強め、レバノンの支配権を獲得します。

アラブ統治の影響

ウマイヤ朝とアッバース朝の統治により、レバノンは異民族と異宗教が共存する場となりました。特にマロン教徒の祖先がこの時期にレバノンに定住し、後の宗派対立へと繋がることとなります。アッバース朝の時代に学問が進展し、レバノンでは医者や法学者、哲学者が活躍しました。貿易港として栄えたティルスやトリポリも、織物やガラス製品などを供給し、アラブ世界や地中海全域に名を馳せました。

十字軍の時代 (1095-1291)

ファーティマ朝による聖地の占領後、十字軍がこの地域に侵攻しました。レバノン海岸でもトリポリ、ベイルート、シドンが次々と十字軍に占拠され、激しい抵抗が繰り広げられました。この時代は十字軍による影響が大きく、その名残が現在まで残り続けています。最終的に1291年にはアッカが陥落し、十字軍の時代は終わりを迎えますが、多くの遺跡がそのまま残されました。

マムルーク朝時代 (1282-1516)

マムルーク朝はトルコ系軍人奴隷たちによって成立し、エジプトとシリアを中心に統治を行いました。この時代にはドゥルーズ派が南部レバノンに移住するなど、さらに地域内の宗教的・民族的な多様性が増しました。マムルーク朝は経済と知識の交流を促進し、特にベイルートは重要な貿易の拠点として繁栄しました。

結論

このように、中世におけるレバノンの歴史は、アラブの支配とその後の王朝の変遷を経て、独自の文化を形成していきました。宗教や民族の融合が進む中で、今日のレバノンの社会や文化を理解する上で重要な時代と言えるでしょう。

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