中世日本紀

中世日本紀とは

中世日本紀（ちゅうせいにほんぎ）は、日本中世における独特の神話群を指す学術の用語です。この神話群は、主に『日本書紀』などの古典文献を基にしながらも、本地垂迹説に則り多様に解釈され、再編成されています。このような神話は「中世神話」とも呼ばれ、特に神仏習合の思想が反映されています。

背景

中世においては、社会のあらゆる側面に仏教の影響が浸透していました。呪術的な信仰が依然として残存する一方で、より合理的な抽象的論理の重要性が求められる時代でもありました。律令国家の時代においては、『日本書紀』の解釈は歴史的な祭祀氏族によって行われましたが、時が進むにつれ、その役割は密教僧や歌学者、各神社の神人へと移っていきました。

この過程で、仏教思想を基盤にした神話の新たな解釈が生まれ、様々な文献に記録されました。しかし、これらの記録は統一的でなく、曲折したバリエーションが各所に残されています。

主な神話

えびす信仰

『太平記』において、ヒルコは西宮大明神であるという説が紹介されています。この説は、卜部氏の卜部兼員が語ったとしており、以降、『平家物語』や『古今和歌集序聞書三流抄』でも言及されています。彼は天照大神から西宮を賜ったとされ、ヒルコ＝えびすという解釈が広がりました。

天叢雲剣

新羅の僧道行が熱田神宮の神剣・天叢雲剣を盗もうとした逸話がありますが、この事件は大江匡房の『筥崎宮記』にも記されています。道行が剣を奪おうとした際に、阿弥陀如来の垂迹である宇佐八幡が彼を倒し、剣を取り戻すという物語が存在します。

第六天魔王と天照大神

『沙石集』には、天照大神が日本国を創生する際に、海中の大日如来の印文を見つけ、そこから滴が落ちる様子を描いており、これを阻もうとする第六天魔王との対峙の物語が語られています。この神話に基づく誓いが、伊勢神宮では仏教用語を隠語にする一因ともなりました。

豊受大神

伊勢神道においては、豊受大神が天照大神と同等の存在として扱われていました。度会氏がこれを強調するために、様々な伝承が作られ、彼女の再評価が進みました。このような動きは、神本仏迹説の思想とも関連しており、神道の中で仏教的影響が見られる場面も多々ありました。

学術研究

近代においては、本居宣長の『古事記伝』以降、神話解釈は中世の視点からだんだんと仏教的視点を排除し、国家[[神道]]へと向かいました。特に明治維新の際には神仏分離が進み、神仏習合思想が大きな打撃を受けました。

1960年代に入ってからは、桜井好朗による研究が進展し、神話学や歴史学の分野においても新しい視点が導入されてきました。特に、従来の神話体系を用いた思想実験の試みや、王朝国家の再編成手法としての神話の再評価がなされています。

このように中世日本紀は、日本の神話や宗教、文化が複雑に絡み合った結果として、深い意味合いを持つ文献となっています。

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