中医師

中医師の概要

中医師（ちゅういし）は、中国の伝統医学である中医学を専門とする医師のことを指します。中医師は香港や台湾、アメリカ合衆国をはじめとする多くの国で国家資格とされています。この職業は、病気の治療や医事業務を行う医師として数千年の歴史を有し、古代から中医師の職務や制度は形成されてきました。

中医師の教育と資格取得

中国では1982年に制定された「三台の馬車政策」により、医師教育の場が3つのカテゴリーに分かれました。具体的には、(1)西洋医学の医師、(2)西洋医学と中医学を併用する医師、(3)中医学専門の医師の3種類です。中医師はその中でも中医学に特化している医者であり、さまざまな専門領域を持っています。たとえば、中薬を用いる中医師、針灸に従事する針灸医師、推拿を行う推拿医師、気功に特化した専門家などがいます。これは日本のはり師、きゅう師、あん摩師と類似点がありますが、それぞれの教育体系や内容には違いがあります。

中医師の専門教育は基本的に西洋医学と中医学の比率が6：4とされており、日本の鍼灸学校のカリキュラムに似ています。しかし、中国の医療教育は臨床実習や解剖学においてもより充実しており、留学生が資格を取得することが難しい状況があります。もし日本の医師免許や関連資格を持つ者が中医学を学ぶ場合は、別途条件が異なる場合があります。

歴史的背景

中国の歴代の王朝は古くから中医師制度を設け、医療業務を重視してきました。たとえば、周の時代には医師が上士と下士に分けられ、秦時代には太医令が設置されました。また、後漢や魏の時代には太常や少府といった官職があり、この者たちが医療サービスを提供していました。隋唐時代には太医署が設置され、宋の時代には医官院が形成され、金時代には太医院と改称されました。これらの仕組みは元、明、清朝に至るまで引き継がれました。

民間においては、医術の知識は主に師弟伝授の方法で受け継がれ、医師の徳性も大切にされてきました。唐時代の名医・孫思邈は、『備急千金薬方』において詳細な治療法や医徳について述べています。

各地の中医師資格取得方法

中国本土

中医師資格は大きく二つに分かれ、一般的に中医師資格と助理中医師資格があります。資格取得には中医薬大学または中医学院を卒業し、試験に合格する必要があります。合格率は年々約80%とされています。

香港

香港では最近になって中医師資格が規定され、香港中医薬管理委員会が主催する試験を受ける必要があります。試験は筆記試験と臨床試験に分かれており、2005年の合格率はそれぞれ36%、65.5%でした。香港の中医師には、資格試験を受けていない“表列中医師”と、合格した“登記中医師”に分かれます。

澳門

澳門では中医薬大学を卒業し、衛生局へ免許申請を行うことで、試験なしで資格を取得できます。診療所を開業したい場合には、免許の発行後に詳細資料を提出し、衛生局の検査を経て開業可能になります。

台湾

台湾では中医薬大学で学位を取得後、専技試験に合格することが求められます。また、特定の条件を満たせば誰でも受験できる第二類の試験も存在しましたが、合格率が1,2%と非常に難易度が高いため、2011年に制度は終了しました。

アメリカ合衆国

アメリカでは州によって中医師の資格取得条件が異なるため、それぞれの州の規定に従う必要があります。

まとめ

中医師は中国の伝統的な医療を支える重要な職業であり、医療技術や知識、医徳が求められる専門職です。各地での教育制度や資格取得方法は異なるものの、共通の目的は病気治療と健康促進です。

もう一度検索