中国の核実験

中国の核実験：歴史、開発、そして影響

中国の核実験は、中華人民共和国が1960年代から1990年代にかけて行った一連の核兵器実験であり、その歴史は、毛沢東の強い核兵器への渇望から始まりました。ソ連との技術協力、独自の核開発、そして実験がもたらした人道的な問題まで、その全容を詳細に解説します。

核開発の背景

毛沢東は、アメリカによる日本への原爆投下以来、核兵器を持つことを強く願っていました。朝鮮戦争中には、アメリカから核攻撃を示唆されたことをきっかけに、ソ連に原爆製造技術の供与を要請します。当初ソ連は消極的でしたが、1954年の台湾海峡危機やハンガリー動乱を機に、中国はソ連との技術供与交渉を成功させました。さらに、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツから帰国した科学者たち（両弾一星）も、中国の核開発に貢献しました。

1960年代初頭には、核兵器開発を専門とする第9学会が設立され、1964年10月16日に新疆ウイグル自治区のロプノール湖で初の核実験を、1967年6月17日には初の水爆実験を実施しました。これにより、中国はアジア初の核保有国となりました。

歴史

ソ連との技術供与交渉

毛沢東は、原爆への強い執着心から、原爆保有を外交的駆け引きのカードとして利用しました。しかし、スターリンは中国への技術供与を拒否しました。朝鮮戦争中にアメリカが核兵器使用の可能性を示唆したことで、毛沢東はスターリンに再度技術供与を要求しますが、これも拒否されます。スターリンの死後、ソ連指導部は中国との関係改善を図り、中国に大型工業計画を売却しました。毛沢東は、これを機に軍事大国を目指す第一次五か年計画を提起します。その後、台湾海峡危機を契機にソ連との交渉が再開され、中国は原子炉建設援助を取り付けました。

核開発12年計画

1955年、広西省でウラン鉱床が発見され、毛沢東は核兵器開発を加速させました。彼は「核開発12年計画」を策定し、アメリカの原爆を「大したものではない」と発言するなど、核兵器開発への強い決意を示しました。1956年には、国防部第5研究所が設立され、弾道ミサイルの開発が始まりました。

ソ連からの技術供与の背景

1957年、ハンガリー動乱を背景に、ソ連は核兵器製造の模型提供を中国に約束しました。これにより、中国の核科学者は大幅に増え、ソ連は中国のために核兵器工場を建設したとされています。しかし、中国の態度に対するソ連の不信感から、1959年にはソ連の技術援助が中止されました。

中ソ対立

1960年代に入ると、中ソ関係は悪化し、ソ連は中国への技術援助を停止しました。しかし、中国は自力でロケット開発に成功し、短距離弾道ミサイル「東風1号」の打ち上げに成功します。1962年には中印国境紛争が勃発し、中国軍が勝利しました。冷戦が激化する中、毛沢東はミサイル防衛システム能力の開発を決定しました。

第9学会

核兵器の開発は、1960年代初頭に設立された第9学会によって進められました。第9学会は、中国の核兵器開発を担う最高機密の研究都市であり、そこで開発された核兵器は、中国とインドの国境に近いチベット自治区などに配備されました。

中国初の原爆実験と核兵器装備

1964年10月16日、中国初の核実験がロプノール湖で実施されました。その後、核弾頭を搭載したミサイルの発射実験も成功させました。1967年には初の水爆実験を行い、核戦力を着実に強化していきました。

チベット高原への核装備

中国は、1970年代初頭に核兵器をチベット高原に輸送し、核ミサイル基地を建設しました。現在も、チベット高原には複数のミサイル発射基地が整備されており、中国の核戦力の中核を担っています。

鄧小平時代・冷戦後

毛沢東の死後、鄧小平が指導者となり、中国は改革開放政策を推進しました。長征ロケットシリーズの開発が進められ、商業衛星打ち上げも活発化しました。1980年には最後の大気圏内核実験、1996年には最後の地下核実験が行われました。しかし、核実験がもたらした周辺地域への影響は深刻な問題として残りました。

ロプノールでの核実験

ロプノール地域は、1960年代から1996年までに45回もの核実験が行われた場所です。特に1950年代から1960年代にかけては軍事上の立ち入り禁止区域とされ、1980年代に解除されました。オーストラリア地質調査協会は、1996年の核実験の規模を1-5キロトンと発表しました。

高田純による調査報告

核防護学者である高田純教授の研究によると、中国の核実験によって、ウイグル人を中心に19万人が急死し、129万人が健康被害に苦しんでいると報告されています。特に、胎児への影響や白血病、甲状腺がんの罹患率が高いことが指摘されています。高田教授は、中国政府の情報隠蔽を批判し、人道的な問題だと訴えています。

ウイグルのアニワル医師の見解

ウイグル人医師のアニワル氏は、中国政府が核実験の被害を隠蔽し、被害者への医療ケアも行っていないと指摘しています。また、核実験場が居住エリアからわずか10キロしか離れていなかったこと、ウイグル人の悪性腫瘍の発生率が、中国の他の地域よりも35%も高いことを指摘しています。BBCは1998年に、この問題を告発するドキュメンタリーを制作し、ローリー・ペック賞を受賞しました。

チベット地区における放射性廃棄物処理施設

中国は、チベットに核廃棄物処理場や核ミサイル基地を秘密裏に建設していました。中国政府は、核廃棄物投棄を認めていますが、安全性については公式な説明をしていません。チベット人医師の報告によると、核実験場付近では病気の発生率が異常に高く、ガンで亡くなる子供も多くいたとされています。中国政府は、放射性廃棄物処分を「浅層処分で充分に安全」としていますが、国際的には深層処分が主流です。

まとめ

中国の核実験は、国家の安全保障を追求する中で、周辺地域に深刻な環境汚染と人道的な悲劇をもたらしました。この問題は、今なお解決されておらず、国際社会が注視する必要があります。

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