中山トンネル (上越新幹線)

中山トンネルの概要と建設の歴史

中山トンネルは、上越新幹線の高崎駅から上毛高原駅の間に位置し、総延長14,857メートルを誇る複線鉄道トンネルです。このトンネルは、建設中に多くの課題を抱えており、特に地質調査の重要性や工法の選択、工程の進行に多大な影響を与えたことで知られています。

建設の背景

上越新幹線の建設は1970年の全国新幹線鉄道整備法の制定により決定され、1971年に基本計画が決定されました。この新幹線は東京と新潟を結ぶ高速鉄道として位置付けられていましたが、トンネルの建設が進む中で予想外の難工事が続いていました。特に、工事の開始前に行われた地質調査が不十分であったことが大きな影響を及ぼしました。

経路選択と工事の複雑さ

群馬県内での新幹線の経路は、利根川に沿うものではなく、月夜野の高原地帯の下を通る経路が選ばれました。この選択には地域開発の利権が影響していましたが、工事の難航を招く要因ともなりました。実際に選ばれた経路は、地質の良好な部分を避けており、結果として工事が難航することとなりました。

トンネルの建設中には、2度の大出水事故が発生しました。これにより、経路変更が余儀なくされ、トンネル内には半径1,500メートルの曲線が挿入されることになりました。このため、新幹線の営業速度が275 km/hから160 km/hに制限される事態に陥りました。

工法の革新

中山トンネルの工事は日本で初めて新オーストリアトンネル工法（NATM）が採用されました。この工法は、トンネルの内部圧力に対応するための新しい技術として導入されましたが、他の工法と比較して初めは施工の容易さが課題となりました。結果として、NATMはトンネル工事の標準的な手法となり、その後の工事にも広く応用されるようになりました。

工期と完工

中山トンネルの建設工事は、当初1976年度に完成する予定でしたが、様々なトラブルや地質問題により工期が延び、最終的に1982年11月15日に開通しました。建設にあたったのは約10年、延べ230万人以上の作業員が関与し、総額1246億5023万円の費用がかかりました。

特に四方木工区では、2度の大出水事故が発生し、工期が大幅に延長されました。このように厳しい条件下でプロジェクトが進行したため、中山トンネルは日本の土木工事史において重要な教訓を提供するものとなりました。

渇水対策

中山トンネルの工事に伴い、周辺地域では水廿の問題が発生しました。そのため、農業用水の確保と地域住民の飲料水供給に向けた対策が急務となりました。給水車の出動や配管の急遽建設など、様々な対策が講じられ、工事の影響を軽減する努力がなされました。

結論

中山トンネルは、技術的な挑戦と人々の努力の結晶です。その建設過程で得られた教訓は、今後のトンネル建設においても重要な指針となり、技術の向上に寄与することでしょう。

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