中村博愛

中村博愛

中村博愛（なかむら ひろなり / ひろやす、1844年2月17日 - 1902年10月30日）は、幕末の薩摩藩士であり、明治期には外交官、官僚、政治家として活躍しました。元老院議官や貴族院勅選議員も務め、錦鶏間祗候の栄誉にも浴しています。旧名は宗見、変名として吉野清左衛門を用いていました。

生い立ちと学問

薩摩藩士の家に生まれた中村博愛は、長崎養生所でオランダ軍医ボードウィンから医学を学びました。その後、藩の開成所で英語を修得。薩摩藩の第一次英国留学生に選ばれ、1865年に吉野清左衛門と変名し、イギリスへ密出国。化学を学びました。1866年にはフランスへ留学し、さらに見識を深めました。帰国後は、藩の開成所でフランス語を教えるなど、語学力も活かしました。

明治維新後の活躍

明治維新後、中村は政府に出仕し、その才能を発揮しました。1869年には、西郷従道や山縣有朋の欧州視察に通弁官として随行。帰国後は、兵部省、工部省で要職を歴任し、日本の近代化に貢献しました。

1873年からは外務省に転じ、外交官としてのキャリアをスタートさせました。二等書記官としてロシア公使館に在勤したのを皮切りに、マルセイユ領事、イタリア公使館在勤、在イタリア臨時代理公使などを歴任。その後も、外務省会計局長や弁理公使としてオランダやデンマークに派遣され、国際舞台で活躍しました。1888年に帰国。

政界での活動

1890年、中村は元老院議官に就任。その後、元老院が廃止されたため非職となりましたが、錦鶏間祗候を仰せ付けられました。1891年には貴族院勅選議員に任じられ、その生涯を終えるまで在任しました。

栄典と顕彰

中村は、その功績から正五位、従四位に叙せられ、勲四等旭日小綬章、勲三等旭日中綬章を受章。また、大日本帝国憲法発布記念章も授与されています。さらに、デンマーク王国からダンネブロ勲章コマンドル・プレミエルクラスを授与されるなど、国際的な評価も得ていました。

1982年には、鹿児島中央駅前に建立された薩摩藩英国留学生の像「若き薩摩の群像」の一人として、中村の銅像が建てられ、その功績が後世に伝えられています。

参考文献

大植四郎編『明治過去帳』新訂初版、東京美術、1971年（原著私家版1935年）。
衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年。
外務省外交史料館日本外交史辞典編纂委員会『新版 日本外交史辞典』山川出版社、1992年。
我部政男・広瀬順晧編『国立公文書館所蔵 勅奏任官履歴原書 下巻』柏書房、1995年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
富田仁編『海を越えた日本人名事典』新訂増補、日外アソシエーツ、2005年。
* 安岡昭男編『幕末維新大人名事典』下巻、新人物往来社、2010年。

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