中村平野

中村平野

中村平野は、高知県の南西部に位置し、四万十市南部から宿毛市東部に広がる平野です。この平野は、四万十川の支流である中筋川流域を中心に、四万十川下流域と支流の後川流域によって形成された沖積低地です。別名、中筋平野とも呼ばれています。

地理的特徴

地質学的には、中村平野は四万十川・後川流域と中筋川流域に分けられます。四万十川・後川流域は、川沿いの氾濫原や溺れ谷の名残が見られ、両岸には低山で区切られた小さな平地が帯状に分布しています。一方、中筋川流域は、北の国見断層と南の江ノ村断層に挟まれた東西に延びる地溝帯（中筋地溝帯）です。

中筋川は河床勾配が緩やかで、四万十川との落差が小さいため、排水が悪く、かつては水害が頻発していました。江戸時代から洪水対策が行われ、昭和4年からは国直轄の治水事業が進められました。河川改修により、曲流部の改修や中筋川河口の付け替え工事が行われ、近年の水害は大幅に減少しました。

農業

戦前の中村平野では、低湿な土地を利用したコリヤナギ（杞柳）の栽培が盛んでした。コリヤナギは柳行李の材料として利用されていました。戦後になると、水稲、イグサ、タバコなどの栽培へと転換し、ビニールハウスを使ったキュウリ、ピーマン、トマトなどの促成栽培も導入されました。

歴史

中村平野には、縄文時代や弥生時代の遺跡、古墳が数多く存在します。特に、平野西部にある平田曽我山古墳は、高知県内で最大規模の古墳です。古代には幡多郡に属し、土佐国には都佐国造と波多国造の二つの国造が置かれました。波多国造は幡多郡を拠点とした豪族と考えられています。

平安時代には、幡多郡の郡衙が具同村（現在の四万十市具同）に置かれました。その後、幡多郡は九条家の荘園（幡多荘）となり、さらに一条家へと引き継がれました。室町時代には、応仁の乱を避けて一条教房が幡多荘へ下向し、中村に居館を構えました。この中村が現在の四万十市の中心部であり、土佐一条氏によって京を模した街づくりが進められ、「土佐の小京都」と呼ばれるほど繁栄しました。

しかし、昭和21年の昭和南海地震によって壊滅的な被害を受け、往時の街並みは失われました。現在は、整然と区画された町割のみがその面影を残しています。

交通

中村平野の交通網は、以下の通りです。

鉄道: 土佐くろしお鉄道宿毛線
道路: 国道56号（宿毛街道）、国道321号、国道439号、国道441号、中村宿毛道路
港湾: 下田港

参考文献

荻慎一郎、森公章、市村高男、下村公彦、田村安興『高知県の歴史』山川出版社〈県史 39〉、2012第2版。ISBN 978-4-634-32391-9。

外部リンク

* 中村平野 - コトバンク

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