中村歌六 (5代目)

五代目中村歌六（1950年10月14日生まれ）は、本名を小川進一とする歌舞伎役者です。屋号は播磨屋、定紋は揚羽蝶、替紋は蔓片喰・歌六梅。俳名に紫琴、芝琴を持ちます。暁星高等学校を卒業し、伝統歌舞伎保存会の会員であり、重要無形文化財「歌舞伎脇役」の各個認定保持者（人間国宝）です。

歌舞伎役者としての道のりは、二代目中村歌昇の長男として始まりました。1955年9月、歌舞伎座で四代目中村米吉を襲名し初舞台を踏みます。米吉時代には、親戚の時蔵や勘九郎（18世勘三郎）らと「杉の子会」を主催し古典を学ぶ傍ら、浅利慶太に師事し劇団四季にも参加するなど、多岐にわたる活動を展開しました。1981年6月、歌舞伎座にて五代目中村歌六を襲名。その後は歌舞伎に加え、新劇にも出演し、三代目市川猿之助の一座を中心に活躍しました。播磨屋復帰後は、副将格として吉右衛門一座に迎えられました。

歌六の芸域は広く、立役を中心に、敵役、老役、女方など様々な役柄を演じます。猿之助一座時代には副座主格として猿之助を支え、多くのスーパー[[歌舞伎]]や復活狂言で重要な役割を担いました。『ヤマトタケル』のタケヒコ役はその代表例です。近年では特に老役での活躍が目覚ましく、『夏祭浪花鑑』の釣船三婦、『伊賀越道中双六』の雲助平作など、数々の大役を舞台で演じ、その演技は観客から高い評価を得ています。その他、『義経千本桜』の弥左衛門、『梶原平三誉石切』の六郎太夫、『ひらかな盛衰記』の漁師権四郎など、舞台を引き締める存在として、その名を知られています。

新作歌舞伎にも積極的に挑戦し、『大川の隠居』の船頭友五郎、『竜馬がゆく〜立志編〜』の勝海舟、『高野聖』の親仁などで、その演技に深みを見せています。女方としては、『伽羅先代萩』の八汐や栄御前、『金幣猿島郡』の如月尼を得意とし、三婆の一つである『盛綱陣屋』の微妙も演じています。2010年9月には、新橋演舞場で弟の三代目中村又五郎（当時・歌昇）とともに、屋号を萬屋から播磨屋に戻しました。この際、『伊賀越道中双六』（沼津）の雲助平作を演じ、初代中村吉右衛門、三代目中村歌六から受け継がれる播磨屋の芸の伝承を披露しました。

長年の舞台生活と老役としての卓越した演技は、多くの賞を受賞するに至りました。2010年には松尾芸能賞の演劇優秀賞、2015年には読売演劇大賞優秀男優賞と芸術選奨文部科学大臣賞、2016年には日本芸術院賞、2018年には紫綬褒章を受章しました。そして2023年には、重要無形文化財「歌舞伎脇役」の保持者として人間国宝に認定されました。

親族には、叔父に萬屋錦之介、中村嘉葎雄、四代目中村時蔵、従兄弟に中村萬壽、二代目中村錦之助、二代目中村獅童がいます。妻はロス・インディオスの二代目女性ボーカルとして活動していた大岡恵子(おがわ恵子)であり、長男は女方として活躍する五代目中村米吉です。

映画やテレビドラマにも出演しており、1978年の『柳生一族の陰謀』では猿若雪之丞役を、2011年の『鬼平犯科帳スペシャル 盗賊婚礼』では勘助役を演じています。

五代目中村歌六は、その卓越した演技力と歌舞伎界への貢献により、現代を代表する名優の一人として、今後もその活躍が期待されています。

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