中東戦域 (第一次世界大戦)

中東戦域（第一次世界大戦）

第一次世界大戦中、中東地域で展開された戦いを指します。この戦域は、ガリポリ、コーカサス、シナイ・パレスチナ、ペルシア、メソポタミアなど、広範囲に及びました。連合国と中央同盟国が激戦を繰り広げ、その結果は中東の政治地図に大きな影響を与えました。

背景

オスマン帝国は、当初は親ドイツ的な中立を保っていましたが、ドイツとの経済関係が深まるにつれて参戦を決意しました。1914年10月、オスマン軍がクリミア半島を砲撃し、ロシアとの国交を断絶。これに対し、イギリスとフランスもオスマン帝国への敵対行動を開始しました。

1914年

コーカサス

11月2日、ロシア帝国軍がオスマン第3軍の拠点エルズルムへ進撃を開始。オスマン軍は反撃し、戦線は国境付近で膠着状態となりました。しかし、12月にはオスマン軍が大規模な攻勢を開始。サルカムシュを目指しましたが、天候の悪化とロシア軍の反撃により失敗。オスマン軍は甚大な損害を被り、ロシア軍の勝利に終わりました。

ダーダネルス

ロシアの要請を受け、イギリス海軍はダーダネルス海峡の強行突破を計画しました。しかし、オスマン軍の防衛は堅く、英仏連合艦隊は大きな損害を受けました。その後、陸軍による上陸作戦が計画されましたが、これもオスマン軍の激しい抵抗により失敗に終わりました。

メソポタミア

イギリス軍はペルシア湾の石油利権保護を名目にメソポタミアへ侵攻。11月にはバスラを占領しました。その後、オスマン軍も反撃を試みましたが、イギリス軍の優勢は揺るぎませんでした。

シナイ及びパレスチナ

オスマン軍はエジプト攻略を試みましたが、イギリス軍の抵抗に遭い失敗。この後、両軍はガリポリ戦の影響で沈静状態となりました。

1915年

コーカサス

前年のオスマン軍の敗北により戦力バランスは崩れていましたが、両軍とも戦力を増強。秋にはロシア軍の新しい指揮官が就任し、戦線は膠着状態のままこの年を終えました。

ダーダネルス

4月、英仏連合軍がガリポリ半島へ強行上陸を開始しましたが、オスマン軍はムスタファ・ケマルらの活躍によりこれを撃退。その後、戦いは陣地戦の様相を呈しました。8月には連合軍が総攻撃を試みましたが、オスマン軍の防衛を崩すことができず、1916年1月には連合軍が全面撤退しました。

メソポタミア

イギリス軍はナーシリーヤやアマラを占領し、クート・エル・アマラを占拠。しかし、オスマン軍の反撃によりクートに篭城することとなりました。

1916年

コーカサス

1月、ロシア軍は攻勢を開始しエルズルム要塞を攻略。オスマン軍は反撃しましたが、戦況は好転しませんでした。

メソポタミア

クート攻囲戦が続き、イギリス軍の救出作戦も失敗。4月、クートは陥落し、オスマン軍の勝利となりました。その後、イギリス軍は戦力を増強し年末に攻勢を試みます。一方オスマン軍は戦力不足に悩まされていました。

シナイ及びパレスチナ

オスマン帝国支配下のメッカ太守がイギリスの呼びかけに応じアラブ反乱を開始。オスマン軍はスエズへの進攻を試みましたが、ロマニの戦いで敗退しました。

1917年

コーカサス

ロシア革命の影響でロシア軍の戦意が低下。オスマン軍も追撃する余裕がなく、大規模な戦闘は行われませんでした。

メソポタミア

イギリス軍はクートを再占領し、バグダードを陥落。オスマン軍は後退を余儀なくされました。

シナイ及びパレスチナ

イギリス軍はオスマン軍をシナイ半島から駆逐。ガザ攻撃には失敗しましたが、エドムンド・アレンビー司令官のもとで戦力を増強。ベエルシェバ攻略を契機にガザを攻略し、エルサレムを占領しました。

1918年

コーカサス

ロシア軍が解隊する中、オスマン軍はアルメニア地方を回復。南部カフカス地方を制圧しましたが、休戦条約締結に伴い撤退しました。

メソポタミア

オスマン軍は戦線崩壊の危機にあり、イギリス軍に連戦連敗。シャルカトの戦いで壊滅的な打撃を受けました。

シナイ及びパレスチナ

イギリス軍は大規模な攻勢を開始し、オスマン軍を圧倒。電撃軍集団を壊滅させ、ダマスカスやアレッポを占領しました。

終戦

バルカン半島のサロニカ戦線が崩壊し、ブルガリアが休戦。オスマン帝国はムドロス休戦協定を締結し、中東戦線は終結しました。

脚注

参考文献

デイヴィット・フロムキン（著）、平野勇夫、椋田直子他（翻訳）『平和を破滅させた和平 上』紀伊國屋書店、1988=2004年翻訳。ISBN 9784314009669。
デイヴィット・フロムキン（著）、平野勇夫、椋田直子他（翻訳）『平和を破滅させた和平 下』紀伊國屋書店、1988=2004年翻訳。ISBN 9784314009676。
樋口正治『自一九一四年至一九一八年 近東に於ける前大戦の考察』偕行社、1940年。
リデル・ハート、上村達雄（訳）『第一次世界大戦〈下〉』中央公論社、1970=1976年翻訳/2001年。ISBN 9784120031007。
Bruce, Anthony (2002). The Last Crusade: The Palestine Campaign in the First World War. John Murray Publishers. ISBN 0719554322
Cornish, Nik (2006). The Russian Army and the First World War. Spellmount. ISBN 1862272883
Erickson, Edward (2001). Ordered to Die: A History of the Ottoman Army in the First World War. Praeger. ISBN 0313315167
Erickson, Edward (2007). Ottoman Army Effectiveness in World War I: A Comparative Study. Routledge. ISBN 0415770998
Erickson, Edward (2008). Gallipoli and the Middle East 1914-1918. Amber Books. ISBN 1906626049
Wilcox, Ron (2006). Battles on the Tigris: The Mesopotamian Campaign of the First World War. Pen & sword. ISBN 1844154300

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