中江ノ島

中江ノ島：隠れキリシタンの聖地

中江ノ島は、長崎県平戸島の沖合約2kmに位置する、長さ400m、幅50mの小さな無人島です。この島は、17世紀前半にキリスト教が禁止された時代、平戸藩によってキリシタンの処刑が行われた場所として、また、隠れキリシタンにとって重要な聖地となりました。

歴史と信仰

1622年、平戸や生月で宣教活動を行っていたカミロ・コンスタンツォ神父を支援したヨハネ坂本左衛門とダミヤン出口、そしてその家族が中江ノ島で処刑されました。この出来事から、島は隠れキリシタンの間で「天国への門」と見なされ、「お中江様」などと敬われるようになりました。

特に重要なのが、島で行われる「お水取り」という儀式です。神父が不在のため、隠れキリシタンは自ら洗礼を執り行ってきましたが、その際に必要な「サンジュアンさまの御水（聖水）」を汲み取る場所として、中江ノ島は特別な意味を持ちました。

「お水取り」は、クリスマスや復活祭などのキリスト教の祝日、または急病人が出た際に行われました。禁教時代には、人目を避けるために夜中に島へ渡ったり、漁師が休憩を装って上陸したりしました。

島の様子と「お水取り」の儀式

島全体は岩場で、柱状節理が特徴的です。上部には松や笹が生い茂り、北側は切り立った崖になっています。南面にはわずかな平地があり、そこに殉教者を祀る祠が建てられています。この祠の先の岩の裂け目で、「お水取り」が行われます。

儀式では、茣蓙を敷いて蝋燭を灯し、神酒と刺身を供え、祈りを捧げます。岩の裂け目から湧き出る水を、萱や葉を導管として一升瓶に受けます。この水が聖水となり、「お授け（洗礼）」や葬儀、家の清めなど、様々な場面で使用されました。

聖水には、日照りでも枯れない、オラショを上げると溢れる、隠れキリシタン以外の人には湧かない、腐らない、減らないといった伝承があります。

現在と未来

中江ノ島は原則上陸禁止ですが、2017年には平戸市がボランティアを募り、漂着ごみの回収作業が行われました。この島は、隠れキリシタンの信仰の歴史を今に伝える重要な場所として、今後も大切に保護されるでしょう。

島は文化財保護法による重要文化的景観「平戸島の文化的景観」に選定されており、長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産として世界遺産にも登録されています。

関連情報

春日集落
安満岳
外部リンク
中江ノ島（動画）インターネット放送局「よかよかテレビ」
* 中江ノ島（動画）Oratio

もう一度検索