安満岳

安満岳（やすまんだけ）

長崎県平戸市の平戸島北西部にそびえる安満岳は、標高530mを誇る平戸市および平戸島の最高峰です。その山容は、山頂部が平らで周囲が急峻な斜面で囲まれたメサ地形を呈しています。この特徴的な地形は、火山岩（凝灰岩類、安山岩等）によって形成されています。

自然

安満岳は、自然公園法に基づき西海国立公園の第1種特別地域に指定されており、豊かな自然が保護されています。山の大部分は照葉樹林で覆われており、イスノキ、アカガシ、スダジイなどの樹木が繁茂しています。また、樹林内には長崎県北部でも有数の多様な昆虫が生息しており、生物多様性の観点からも重要な場所となっています。

山中には、平戸市民の生活用水を供給する箕坪川ダムの水源である箕坪川の水源地が存在し、水源の森として保護されています。この水源は、地域住民の生活を支える重要な役割を担っています。

歴史

安満岳は、古代より島南部の志々伎山と並び、平戸地域における山岳信仰の中心として崇敬されてきました。山頂近くには、社伝によれば718年（養老2年）に加賀国から分霊されたとされる白山神社が鎮座しています。また、明治初期に廃寺となるまで、在地仏教勢力の中心としてキリスト教布教を図る宣教師等と対抗した西禅寺がありました。西禅寺跡には、庭園遺構や多数の宝篋印塔が現在も残されており、歴史的な景観を今に伝えています。

江戸時代には、キリスト教が禁教政策により弾圧される中、安満岳の山頂にある石塔（「薩摩塔」）と自然石による石祠が「安満岳の奥の院様」と呼ばれ、隠れキリシタンの信仰対象となりました。この事実は、安満岳が単なる自然の山ではなく、人々の信仰と歴史が深く結びついた場所であることを示しています。

世界遺産

2007年（平成19年）には、「平戸島の聖地と集落（安満岳と周辺、春日集落の棚田及び中江ノ島）」としてユネスコの暫定リストに掲載されました。その後、文化財保護法の重要文化的景観として「平戸島の文化的景観」の一画に選定され、2018年（平成30年）には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界遺産に登録されました。この登録は、安満岳が持つ歴史的、文化的価値が国際的に認められたことを意味します。

登山

安満岳への登山ルートは複数あります。

白山比賣神社参道ルート

平戸桟橋から生月バスの生月島行きに乗り、約20分の山野入口停留所で下車します。停留所脇の山野教会へ続く側道（案内板あり）を10分ほど歩くと、一之鳥居が現れます。ここから山頂までは約1時間～1時間半程度です。参道は、苔が生えた不規則な石や湿った土、落ち葉などで足場が悪いため、注意が必要です。

南側登山口ルート

山の南側には駐車場が整備されており、遊歩道が整備されています。このルートを利用すると、勾配が少なく20～30分で三之鳥居に到着できます。駐車場には簡易トイレが設置されており、景勝地の鯛ノ鼻への分岐点にもなっています。ただし、公共交通機関は利用できず、自家用車、レンタカー、タクシーなどでのアクセスとなります。

安満岳は、自然の美しさと歴史の重みが融合した魅力的な山です。登山ルートを選ぶことで、体力や目的に合わせた楽しみ方ができます。

脚注

参考書籍

「図説 佐世保・平戸・松浦・北松の歴史」（久村貞男・萩原博文監修 2010年2月 郷土出版社刊）

外部リンク

安満岳エリアの自然に関する解説 - 長崎県
* 安満 霊山の原生林とメサ台地を歩く
- 長崎県

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