中臣御食子

中臣御食子（なかとみ の みけこ）は、飛鳥時代に名を残した貴族であり、後に藤原氏の祖となる中臣鎌足の父として広く知られています。彼の名は、彌気（みけ）、美気古（みけこ）とも記されています。中臣氏は、代々神祇官の要職を務めた家柄であり、御食子は中臣氏第一門の祖とされています。父は中臣可多能祜（なかとみ の かたのこ）、母は山部歌子の娘である那爾毛古娘（なにもこのむすめ）、妻は大伴咋（おおとものくい）の娘である智仙姫（ちせんひめ）です。

御食子の経歴については、詳しい記録は残されていません。しかし、推古天皇36年（628年）に推古天皇が崩御した際、蘇我蝦夷（そがのえみし）や阿倍内麻呂（あべのうつしまろ）といった有力者たちと協力し、次期天皇に田村皇子（たむらのひこみこ、後の舒明天皇）を推挙したという記録があります。このことから、御食子が当時の政局において一定の影響力を持っていたことが伺えます。

その他の業績については不明な点が多いものの、皇極天皇3年（644年）に息子の鎌足が神祇伯（じんぎはく）への就任を辞退していることから、御食子自身も生前に神祇伯を務めていたのではないかという説があります。神祇伯は、神祇官の長官であり、国の祭祀を司る重要な役職です。もしこの説が正しければ、御食子は中臣氏の伝統を受け継ぎ、神祇官として朝廷に仕えていたことになります。

御食子の系譜を見ると、彼が多くの子供たちに恵まれたことがわかります。嫡男である鎌足は、後に藤原姓を賜り、藤原氏の基礎を築くことになります。また、久太（きゅうた）や垂目（たれめ）といった息子たちもおり、彼らもそれぞれ中臣氏の一族として歴史に名を残しています。

中臣御食子は、記録こそ少ないものの、飛鳥時代の政治や文化に深く関わった人物であったと考えられます。息子の鎌足が藤原氏の祖となったことを考えると、御食子の存在は日本の歴史において重要な意味を持っています。今後の研究によって、彼の業績や人物像がより鮮明になることが期待されます。

参考文献
宇治谷孟『日本書紀 （下）』講談社学術文庫、1988年
『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年
* 宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

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